■船体構造
復元力とはなにか
船が外力で横傾斜したとき、重力と浮力の双方の作用で元の直立状態に戻す強さを”復元力”と呼んでいる。
ただし、船が傾斜したり元の直立状態に戻ったりするのは、船体の回転運動であるから、船の復元力は正確には力ではなくモーメントである。
つまり、復元力とは「船が外力を受けて傾斜した場合に元に戻るのに必要なモーメント」である。復元力の大きさは、次式で表す。
復元力=W×GZ=W×GM×Sinθ
復元力をこの式の形で表し得る範囲、すなわち傾斜角10°あるいは15°くらいまでの範囲を、初期復元力という。ここで、GZは、復元てこと呼ばれる。
上式は、GMとある程度傾いた時の初期復元力が比例することを表している。
GMとは何か。GMと浮力の関係図示説明せよ。
船舶重心Gと傾心(メタセンタ)Mの距離、「横メタセンタ高さ(metacentric height)」と呼ばれる。また、浮心は水線以下の体積の重心である。
GMが過大な場合、過小な場合どうなるか
船のGMが大きいと、転覆しにくく安定性が高い。しかし、大きすぎると波の中で横揺れが激しく、乗り心地が悪くなり、荷物が崩れやすくなる。
一方、GMが小さい船は、外力を受けると大きく傾きやすいが、波の揺れは柔らかく、乗り心地が良い。
ただし、小さすぎると小さな外力でも転覆しやすくなるため、慎重に扱う必要がある。また、舵を切るときには、船が外に大きく傾くため、転覆の危険性が高まる。
乗船した船のGMと、乗船時何を用いて求めるか。
GM=KM-KG (Kはキール上面)
排水量曲線図により現在の平均喫水に対応するKMを得る。KMは喫水が分かれば、排水量等数値表(hydrostatic table)からも求められる。
KGについては、重量重心計算で計算して求める。計算が繁雑になるので、重量重心計算表を用いることで機械的に計算できるようになる。
おおよそのGMを求める公式を述べよ。
①
GM=(0.64*B^2)/T^2(B:船幅, T:横揺れ周期)
一般に、適当なGMとは船幅の4~5%である。
②
航行中においては、計算によりKGを求め、排水量曲線図により現在の平均喫水に対応するKMを得る。
GM=KM-KG (Kはキール上面)
KMは喫水が分かれば、排水量等数値表(hydrostatic table)から求められる。
KGについては、重量重心計算で計算して求める。計算が繁雑になるので、重量重心計算表を用いることで機械的に計算できるようになる。
任意の積載状態におけるKGを求めるには重量重心計算書によって、標準状態におけるKGを知り、搭載したものや取り除いたものについて修正する。
③
傾斜試験を実施すれば最も正確な値が求まるが、就航中に実施すること難しい。
④
GMを計算する余裕のないときは、あらかじめ適度なGMの時の本船の状態を把握しておくことで、以下の方法でその大小を比較する。
(1) あらかじめ本船の適度なGMの時の横揺れ周期を把握し、現在の横揺れ周期と比較する。適度な時より横揺れが大きい場合、GMも大きいことがわかる。
(2) 旋回中の傾斜角を適度なGMのときと比較する。GMが大きいと、傾斜角も大きくなる。
(3) 荷役中などに重量物や貨物を移動した際の傾斜角を比較する。
航海中にGMを大きくする方法を述べよ。
・バラスト水の注水
・上部にある重量物を減らす
・下部にある重量物を多くする
・上部にある重量物を下部に移動する
船体の横断面図をホワイトボードに描き,G,M,B,Zの意味と傾斜した場合を力学的に説明せよ。
航海中にGMが小さくなる場合について述べよ。
・燃料の消費
・バラスト水の排出
・貨物や荷物を降ろす
復元力曲線GZ Curve を作図せよ。
GMの直線は何を基準に書くか。傾斜角何度のときがGMか。
初期復元力の接線と、傾斜角が1ラジアン(57.3度)のときの交点がGMである。
GZが最大及び0になる点をなんというか。
最大 : 復元力最大角(最大復元てこ)
0 : 復元力喪失角
復原力曲線と横軸で囲まれている部分は 何か
傾斜角が360°まであるとすれば、曲線はどのようになるか書け。
180°までは図示の通り、360°までは、再度0-180°までの図を描けばよい。
貨物が横に移動して傾いた状態で静止している場合、復元力曲線はどうなるか。
横向きの圧力を受けている場合、復元力曲線と圧力による傾斜モーメントの曲線の交点B(θ1)の傾斜角でモーメントは釣り合う。
=θ1の角度で傾いたまま航行する。
しかし、突風などを受けて更に船が傾斜すると、風圧モーメントの仕事量(OACθ2)と、動的復元力(ODθ2)が等しくなるθ2まで船は傾斜する。
復元モーメント曲線を囲む面積が、傾斜モーメント曲線を囲む面積より大きい間は船(θ3まで)は転覆しない。これを予備的復元力(上図のBCED)という。
傾いた状態でのGZ曲線は上図となり、下記のように作図する。
・θ1で圧力(風圧、貨物や浸水による破口)と、GZが釣り合っている状態=GZが0
・最大予備復元力のθ3を超えると、転覆する=θ3が復元力喪失角
自由水(スロッジング現象)の影響について説明せよ。何が影響するのか。(復元てこを用いて説明せよ。)
自由水とは、自由に移動できる表面を有する液体をいい、船体が傾斜すると、それに伴い液体も傾斜した舷へ移動するので、船体は一層傾斜する。つまり、船体の移動分だけ復元力を減少させる。
船体が傾斜すると、タンク内の液体が移動し、液体の重心がgからg’へ移動する。液体がgg’だけ移動すると、船体の重心GもG’へ移動するので復元てこもGZからG’Zに減少する。
液体が移動する前の重力の作用線と、移動後の重力の作用線との交点をG₀とすると、G₀Z₀=G’Z’である。
つまり、重心がG’でなくG₀に移ったと仮定しても復元力に及ぼす影響は変わらない。
そこで、自由水により重心がG₀へ移ったとすれば、見かけ上の重心は上昇したと考えることが出来る。
すなわち、初期復元力の範囲において復元力は、GMの大小において考えることが出来る。
(復元力=W×GZ=W×GM×Sinθ)
G₀M=GM-GG₀である。
船体強度計算について、荷重曲線、せん断⼒曲線、曲げモーメント曲線の関係について述べよ。
船舶に垂直方向の力がかかった場合、船舶はどうなるか。
船体にかかる力にはどのようなものがあるか。水圧について説明せよ。風圧について説明せよ。
完成図書の中で復原力を知るために用いる図面とは何か。
復元性マニュアル(Stability manual)、排水量曲線図(Hydrostatic curves)、排水量数値表(Hydrostatic table)、復元力曲線(Stability curves)、復元力交差曲線(Stability cross curves)
TPC、MTCとは。
TPC(tons per centimeter immersion, 毎センチ排水トン数)
船の喫水を1cm変化させるために必要な重量。
MTC(moment to change trim 1cm, 毎センチトリムモーメント)
船のトリムを1cm変化させるために必要なモーメント。
■構造/艤装
船舶に備え付けられている船体の構造がわかる図面(完成図書)について述べよ。
一般配置図(General Arrangement)、中央断面図(Midship section)、外板展開図(Shell expansion plan)、入渠用図(Docking plan)
船首部材の補強材(パンチング構造)について図示説明せよ。何と接続しているか。
船首部は航行中に波の衝撃を受け、また、縦揺れして水面をたたき、その他衝突による損傷を受けやすいので特に補強されている。
下記の部材により
①パンチングストリンガ ②パンチングビーム ③ブレストフック ④ディープフロア
[③の役割] 両舷のパンチングストリンガを連結し、船首部を補強するとともに船首材を支えている。そして、船首への衝撃を船首構造全体に伝えて、船首端の受ける損傷を少なくするのに役立つ。
[④の役割] 深さを増したフロアで両舷のフレームの連結を強くし、また、船首の防御性を増すことに役立つ。
船内隔壁の役割について説明せよ
・浸水時に、水密隔壁により海水の流入をそのエリアに留めることができる。
・隔壁は船体の強度を向上させ、火災の拡散を防ぐ防火壁としても機能する。
・貨物倉や水・油タンクなどの区画を形成する役割もある。
船内の隔壁に開口部をあける場合はどんなものが設置されているか?
ボルテッドハッチや水密扉、マンホールが設置されている。
二重底構造とはどのような構造か。また何に利用されるか、名称を知る限り答えよ。
① 内底板,② 中心線ガーダ,③ ソリッドフロア,④サイドガーダ,⑤マージンプレート(縁板),⑥ビルジキール
・二重底構造は、燃料油,潤滑油等のタンク又は清水やバラスト水等のタンクとして利用される。
・中心線ガーダは、二重底内中心線を縦通し、内底板と平板キールを結びつけ、強力なI型ガータを形作る。
・マージンプレートは、船の内底板と外板の接合部にあたる。この板は船の縦強度と横強度を向上させる役割を果たしている。一般的に、ビルジ(船の横揺れによって船側のビルジウェルに流れ込む水)は、内底板の船側部でマージンプレートを傾斜させてビルジ外板との間に形成される。ただし、一部の船ではマージンプレートを水平に配置し、その直下にビルジウェルまたはビルジハットを設けてビルジを溜める方法もある。
コンスタントとは何か。あなたの船はどれぐらいか。の注意事項について
コンスタントとは、船内にある不明な重量物のこと。 不明重量の正体は、バラストタンク内の泥、燃料タンク内のスラッジ、清水タンク内の水垢、また船舶内に積載した機材、部品等も含まれる。コンスタントが増えると通常よりも早く満載状態となり、結果載貨重量トン数に影響を与えることとなる。コンスタントが増えた場合、ドック入渠時に、これらを除去する等の対策を取る。
船に因るが、大体200-250トンくらいと抑えておく。
■操船
浅水影響について説明せよ。
水深が浅い海域を航行する場合,船底へ流れ込む水の流れは側方に回って平面的に流れ、船体周りの水圧分布の様子を変える。
前進中は船首の水圧が最も高く、船体中央部付近では圧力は下がって流れが早くなり、船尾では隙間を埋めるように流れる伴流によって、再び水圧は高められる。この水圧の強弱や船体周りの分布は船型、船速、喫水、水深により変化し、浅水域では増速するにつれて船体中央部の低圧部は船尾の方まで拡がり、下記のような現象を起こす。
①速力の低下
船体抵抗が増加するので、速力は低下する。
船体周りの流れが平面的になり、船側部の流れは加速されて摩擦抵抗が増加する。
また、造波現象に浅水波が入るので、造波抵抗も増え、船速は低下する。
実験から、操船者が速力低下を意識する水深は1.2d(喫水)mと言われている。
②Squat(スクォート)
船体中央部の低圧部が拡がるので、船体が沈下し、トリムが変化する。
船体まわりの水圧分布が変わると、その水圧分布に対応して船体が釣り合いを保つための姿勢をとるので、船体沈下量が大きくなり、船体前後の沈下量の違いから、航走中にトリムが変化する。
③舵効き
回頭時には、旋回性が悪くなり(=旋回径が増大)、針路安定性(追従性)は良くなる。
④振動
浅水域では船尾の伴流が強くなり、プロペラトルクに不規則な変化が生じ、異常な船体振動の原因となる。
船首から広がる航走波の角度は、深海で約20度、船首沈下が出始めると45度程度になる。更に、沈下が激しくなると正横近く80度程度に広がり操縦不能や船体異常振動等の危険状態に陥る。
浅水影響はどれぐらいの水深で影響が現れるか。(水深と喫水の比率)
水深Dと喫水dがD/d=∞:無限ならば影響無いが、D=4d以浅で現れ始める。D=2d以下になれば旋回半径は約1.4倍に拡大する。
H(m)=10d(V/√L)
H:浅水影響が出始める水深, d:喫水, V:速力, L:長さ
側壁影響とは何か。
原因① : 航行中に側壁に近づいた場合
水路の側壁に接近して走ると、船体両側の流れに差が生じて圧力分布が変わる。側壁と船に挟まれた船側付近の水位は低下し、船体を側壁に引き付ける吸引力が生じ、船首部は反発力によって水路の中央に押され、船は斜行の姿勢をとる。
原因② : 海底が傾斜している水路を航行している場合
船の進路に対して直角方向に海底が傾斜している浅水域を航行する場合は、側壁に沿って航行したときと同じ作用が働き、船首部は海底斜面からの反発力を受けて深い方へ押し出される。このような反発作用をバンククッションという。
どのような時に大きくなるか
側壁に近づいた場合、その時に速力が早い場合
どのように操船しなければいけないか
側壁沿いや傾斜している海底付近で側壁影響が発生した場合は、当て舵を側壁の方向にとり、船首側に発生している回頭モーメントを抑えなければならない。
船底が付着生物等によりひどく汚れている場合は、操縦性能はどうなるか、停止距離はどうなるか
船体抵抗が増加するので、速力が落ち停止距離は短くなる。
旋回時の傾斜について
曲げはじめは、舵に働く曲げる方向に横向きの力により、内側に傾くが、次第に遠心力により外側に外方傾斜するようになる。
Z試験について述べよ。
Z試験は針路安定性、応答の速さ、旋回力などを判断する試験で、追従性指数Tと旋回性指数Kを求めることが出来る。
出来る限り直進で<000>とし、10°Z試験の場合、舵を右10度にとる、コースが元の針路から10°偏移したとき、左に10度の舵を取る。コースがピークに達し、反転し、元のコースから反対に10°偏移したとき、再び右10度の舵をとる。これを3回繰り返す。それぞれの舵角、コースの変化を記録し操縦性指数を計算する。
スパイラル試験の目的,方法とその分析方法について述べよ。
試験の目的:
スパイラル試験は、舵角と旋回角速度の関係をプロットすることで、船の針路安定性を評価します。
通常、針路安定性の良い船では、舵角と旋回角速度が一対一で対応するカーブが原点を通って通ることが望ましい状態です。
不安定な領域:
一部の船では、特定の舵角に対して複数の旋回角速度が存在します。例えば、δ2 とδ3 の範囲にある舵角では、二つの曲線が現れます。
この不安定な領域は、直前の運動の影響により、取った舵角に対してどちらに動くか分からない状態を表します。
船の評価:
スパイラル試験や逆スパイラル試験を実施して、不安定ループの幅や高さ、旋回角速度の差を評価します。
これにより、船がどれだけ不安定な領域を持っているかを事前に把握し、適切な対策を講じる必要があります。
逆スパイラル試験について述べよ
逆スパイラル試験とは、スパイラル試験とは逆に、回頭各速度を一定に保つように絶えず舵をとり、そのときの角速度を舵角の平均値を計算するものである。スパイラル試験ではループ幅最大の部分で、外乱の影響により反対側の旋回に回ってしまうことがあるが、逆スパイラル試験ではこれを防ぐことができる。
過度な船尾トリムの場合、問題点は何ですか?荒天時はどのような問題ありますか?
適度な船尾トリムは、プロペラの効率が良く、舵効きも良い。
船尾トリムが大きすぎると、船体の抵抗が大きく、速力が出ない。
荒天時などは船首が左右に振れて針路を保ちにくい。
スラスター使用上の注意
タグ使用上の注意
岸壁着岸時に風潮流以外に考慮すべき要因。
両船体が行き合う場合と並行する場合の吸引・反発作用(二船間の相互作用)について図示説明せよ。
適度な船尾トリムは、プロペラの効率が良く、舵効きも良い。
船尾トリムが大きすぎると、船体の抵抗が大きく、速力が出ない。
荒天時などは船首が左右に振れて針路を保ちにくい。
■錨
錨泊中の船の動きに関して、単錨泊時どのような動きをするか
8の字の振れ回り運動を行う。
振れ回りの周期、大きさは、風の強さ、潮流、個々の船の特性や状態(トリム、喫水)により異なる。
最も力がかかり、走錨しやすいタイミングはいつか
上図において、④、⑦の状態(振れ回り反転し、風を受ける舷が変わった後)が、最も張力がかかり走錨しやすい。
振れ周りを抑える方法
・喫水を深くする
・トリムをイーブンキール、できればバイザヘッド(船首トリム)にする
・錨鎖を伸ばす
・もうひとつの錨を振れ止め錨として利用する(水深の1.5倍程度)
・主機・舵・スラスターを利用し、船首を風にたてるようにする
・双錨泊をする
走錨はどのようにするか(図示)、どうやって検知するか
第一段階:振れ回り走錨
錨泊中の船体の振れと動揺は8の字運動を描く
(図「A」の部分=走錨していない状態)。
風圧力が僅かに錨・錨鎖の把駐力を上回り、船体が振れ回りながら風下に圧流されるような走錨状態を開始する。
(図「B」の部分⇒走錨している状態)
第二段階:圧流走錨
更に風が強くなり、船体が風に対して横倒しになりながら一定の速度で圧流される走錨状態をいう。
(図「C」の部分)⇒この状態での揚錨は非常に困難で、錨鎖を捨てることも検討するべきである。
検知方法(どのようなとき、走錨していると疑うか)
①船位をチェックし、船位が振れ回り範囲を超える場合。
②船首が風に立たなくなった場合。
③風を受ける舷が変わらなくなった場合。
④錨鎖がたるまずに張り続けている場合。
⑤異常な振動が錨鎖を伝わって感じられる場合。
⑥コースレコーダーがサインカーブ運動を示さない場合。
走錨した場合どうするか
(1)直ちに機関を使って圧流されるのを防ぐ。
(2)直ちに揚錨して安全な錨地に転びょうする。
(3)揚錨が困難で座礁や衝突等の危険がある場合、捨錨(錨鎖の切断)をして緊急避難する。
錨鎖伸出量の算出式を述べよ。(通常時,強風時)
風速20mまでは、L(伸出量)=3d(水深)+90m
風速20以上では、L=4d+145m
■荒天航法
台風の右半円および左半円にある場合の避航方法,風の変化について述べよ。
台風は巨大な空気の渦巻きで、風は地上付近では反時計まわりに台風の中心に向かって吹き込んでいる。
右半円は「危険半円」と呼ばれ、吹き込む風と、台風の進行方向が同じであり、半円内で受ける風が強まる。
左半円は「可航半円」と呼ばれ、吹き込む風と、台風の進行方向が逆であり、半円内で受ける風が弱まる。
よって、高い風や波の海域が右半円に偏る。台風を避けるときは、中心から200マイル以上は離し、可能であれば左半円側を航行するのが基本である。
追い波での航行に関して
船が追い波で順走する際、船と波との相対速度が小さいため波乗り状態となり、船尾が波の谷または傾斜前面に入った時に船尾が波に押されて急激な船首揺れ(Yawing)を起こし、船体が波間に横たわる現象をブローチング(波乗り現象)という。このとき来襲する海水が甲板上に急激に打ち込み、復元力が不足するようなことがあれば、船体は横倒しとなり転覆の危険がある。ブローチングが起こる条件下では、船尾から青波や崩れ波が襲うように覆いかぶさってくることがあり、これをプープダウンという。
―針路速力はどのようにするか。
ヒーブツー
舵効きを失わない最小の速力で、波浪を船首から2-3度に受けてその場にとどまる。前進力を維持でき、波浪に対する姿勢を維持することができる。風下側への圧流も少なく、余裕水域が少ない場合も有効。しかし、船首への波の衝撃や海水の打ち込みを防ぐことはできない。
順走(スカッディング)
波浪を斜め船尾に受け、追われる様に航走する。船体が受ける波の衝撃が最も弱く相当の速力を維持できる。特に台風の中心から脱出する際に有効。ただし、保針性が悪くブローチングやプープダウンを起こす可能性がある。
速力が波より早いとどうなるか、遅いとどうなるか。
船速の方が波より速い場合
船の速力が波より速い場合、一般的には船が波の上を滑走し、波を押しのけるように進む。
この場合、船は波の上を滑り、波が船体に大きな影響を与えることなく航行することができる。この状態は、船が波に対して上り坂を登るのではなく、波を下り坂として滑り降りるような状態である。
船速の方が波より遅い場合
船速が波の速度よりも遅い場合、船は波に追いつかれ、波によって押し戻されることがある。この状況では、以下のような影響が生じる可能性がある。
船の動揺: 船が波に追いつかれると、船体が波の動きに影響を受けて揺れることがある。この揺れは、船内での移動や作業を難しくするだけでなく、船員や乗客の快適性にも影響を与える。
船の推進力低下: 船が波に押し戻されると、船の進行方向への推進力が低下する可能性がある。これにより、船の速度が低下し、船が目標の場所に到達する時間が遅れることがある。
安全性の低下: 船が波に追いつかれると、船が不安定になる可能性があります。特に大きな波や悪天候の場合、船が波に押し戻されることで船体に大きな負荷がかかり、船の安定性が低下する恐れがある。
スラミングについて説明せよ。と欠点を述べよ。
波との出会い周期と船体の固有周期が一致し、同調が激しくなる。このとき、縦揺れが同調すると船首の低部を強く打ちつける、これをスラミング(Slamming)という。縦揺れにより、レーシング(プロペラの空転)も発生する。
■非常操船
落水者救助の方法について図示説明せよ。(ウィリアムソンターン、シングルターン、ダブルターン、シャルノウターン)
シングルターン
①転落者の舷へ舵角一杯(35度)にとり、
②急旋回して転落者に向首し、停止する。
転落者を視界内に保ちやすい。転落直後のとっさの対応として有効。救出するまでの時間も比較的短くて済むが、視界良好であることが条件。
ダブルターン
①転落者の舷へ一杯転舵
②180度反対の針路に直進・減速
③転落者を正横後30度程度に見て、再び一杯転舵
④原針路に戻る、本船を転落者の風上に停止させる。
ウィリアムソンターン
①転落者の舷へ一杯転舵
②原針路から60度回頭後、反対舷へ一杯転舵
③原針路と180度反対方位の20度手前くらいで舵中央とし、180度反対の針路に入り、減速停止する。
落水者発生からしばらく時間が経過してしまっている場合や夜間等、操船者が落水者を視認できない場合の行方不明者に対する行動として選択される操船法
シャーナウターン
①転落者の舷へ一杯転舵
②原針路から240度回頭後、反対舷へ一杯転舵
③原針路の反方位20度手前で舵中央とし、反方位の針路に入る
早く元の針路に逆戻りさせ、急いで転落者の位置を知る場合に有利。
どのターンがよいのか?
シングルターンおよびダブルターンは、船橋が落水者を察知した場合や落水者を視認できる場合に選択される操船法である。
ウイリアムソンターンおよびシャーナウターンは、落水者発生からしばらく時間が経過してしまっている場合や夜間等、操船者が落水者を視認できない場合の行方不明者に対する行動として選択される操船。シャーナウターンが最も原針路に戻る時間が早いという研究もある。
船舶とヘリコプターを用いた海中転落者の捜索方法について説明せよ。その際の注意点について説明せよ。
①方形拡大捜索パターン
遭難位置がごく限られた場合など、狭い区域での集中捜索に望ましい。転落者の概算位置から外側に向かって方形に拡大するように捜索する。
②扇形捜索パターン
遭難位置がある程度限られ、捜索域が狭い場合が望ましい。転落者の概算位置から放射状に捜索する。
③平行捜索パターン
捜索区域が大きく、一様なエリアが望ましい。
④船舶・航空機合同捜索パターン
航空機が主体となり、船舶は航空機に指示された針路速力に従う。
船舶からヘリコプターへ怪我人を移送する際の注意点について説明せよ。
・安全な着陸地点の確保
・コミュニケーションの確保
・安全な乗降手順の確立: 船舶とヘリコプターのクルーが連携して安全に乗り降りできるようにします。怪我人の状態に応じて、適切な担架や救助手段を使用し、安全性を確保します。
・着陸と離陸の安定性
・怪我人の安全確保
Search and Rescue(捜索・救助)の頭文字をとって、SAR条約」と呼ばれる。
■気象
台風の定義(大きさ,階級)について述べよ。
日本では最大風速が34ノット以上(風力8以上)の場合に「台風(Typhoon)」と呼ぶ。
理由は34ノット以上の風速になると被害が格段に大きくなるからである。
英語では
風力7以下の熱帯低気圧を「Tropical Depression」
風力8、9を「Tropical Storm」
風力10、11を「Severe Tropical Storm」
風力12以上を「Typhoon」と定義している。
日本周辺の気団配置
・冬・・・・シベリア気団⇒日本の冬は乾燥していて寒い
・梅雨・・・小笠原気団とオホーツク海気団
・夏・・・・小笠原気団⇒日本の夏は湿度が高く蒸し暑い
・秋雨・・・小笠原気団と北日本の気団
冬の代表的な気圧配置を説明せよ
西高東低型 : 大陸にはシベリア高気圧が張り出し、アリューシャン方面に低気圧がある型。気圧傾度が急で強い北西季節風をもたらす。寒気があふれ出し、日本近海は寒い。典型的にこの季節の気候は、日本海側では大雪(時に豪雪や風雪)、瀬戸内海側と太平洋側では降水のない日が続く。
また、太平洋側にはアリューシャン低気圧が発達する。
シベリア高気圧と小笠原高気圧の特徴と違い。
シベリア高気圧
冷たい空気がシベリア地方の地表に溜まってできる、背の低い高気圧(2000m程度)である。冬型の気圧配置のときの天気図にも日本の西側に見ることができる。
その成因は下記である。
・冷たい空気は重く、地表付近に溜まりやすい。
・北半球では、秋分の日を境にして太陽の高度が徐々に低くなり、さらに緯度が高いほど太陽から受ける熱は少なくなる。
・高緯度に位置するシベリア地方の気温は冬に向かってどんどん下がっていく。
・陸地は海に比べて気温が下がりやすい特徴があり、北極海よりシベリア地方の方が気温が低くなる。
・シベリアの南には標高の高いヒマラヤ山脈やチベット高原があり、寒気をせき止める働きをしている。
結果、シベリア地方に背の低いシベリア高気圧が生成される。
小笠原高気圧
小笠原高気圧は、背の高い高気圧(1万m以上)と呼ばれ、湿潤・高温である。
亜熱帯高気圧のうち、太平洋にあるものを北太平洋高気圧といい、その西部、日本の天候に影響する部分を小笠原高気圧という。
小笠原高気圧がなぜ背が高く、湿潤・高温であるかについては、太平洋高気圧の成因から考える必要がある。
太平洋高気圧は、ハドレー循環によって作られる。
ハドレー循環
1.赤道付近で加熱され、密度が小さくなった空気が上昇し、1万6000m付近の対流圏界面まで上昇する。
2.対流圏以上は上昇できず、極の方向(北半球であれば北)へ移動するが、コリオリの力によって右へ曲げられていき、やがて南西風となる
3.次第に冷やされ、緯度30度付近で下降気流となる
4.海にぶつかった下降気流は南へ向かうが、コリオリの力によって右向きに変えられ北東風になる。これを北東貿易風と言う
上記を繰り返し、緯度30度付近で背の高い、乾いた高気圧(太平洋高気圧)ができる。
このようにしてできた北太平洋高気圧は、背が高く乾いている、しかし太平洋上を進むにつれて海からの湿気を多く含むようになり、背の高い、湿った高気圧が発生する。これを小笠原高気圧という。
盛夏では、この小笠原高気圧が発達し湿潤・高温な気候をもたらす。
シベリア高気圧は日本にどんな天気をもたらすか。
北西の季節風が吹き、日本海側で雪が生じる。
シベリア高気圧は水蒸気の少ない大陸で発生するため、乾燥しているが、比較的暖かい日本海を通ることで、海からの熱と水蒸気を補給する。
そのまま日本列島の山脈にぶつかり、強制的に上昇することで、日本海側に雪を降らせる。
雪雲は山を越えることができないため、太平洋側では乾燥した風が吹くようになる。
このように陸面や海面の影響を受けて気団の性質が変わることを気団変質という。
春と夏の間の雨の多い季節をなんというか。
梅雨
なぜ梅雨になるのか。梅雨前線はなぜできるのか
「梅雨前線」は、北側にあるオホーツク海気団と、南側にある小笠原気団が、季節とともに入れ替わろうとすることで起きる停滞前線の一種である。この2つの気団はほぼ同じ勢力のため、お互いに張り合うことで動きがゆっくりになり、停滞しているように見える。
その後、小笠原気団がオホーツク海気団を北へ押し上げていき、北海道の南あたりで消えることがほとんどである。北海道に梅雨がないといわれるのはこのためで、北海道へは7月下旬頃に梅雨前線が到達するので、気温の上昇とともに気団の勢力は弱まっていく。
梅雨前線を形成するそれぞれの気団の特徴を述べよ
・小笠原気団・・・太平洋で太平洋高気圧が発達してできる。あたたかく、湿っている。
・オホーツク海気団・・・オホーツク海でオホーツク海高気圧が発達してできる。冷たく、湿っている。
梅雨前線の雨の降り方について。
前線付近では雨が降り続く。
小笠原気団は、太平洋海洋から大量の水蒸気を吸収して湿潤な空気を持っている。ただ、北側の気団と南側の気団とではお互いの温度差が小さいため、通常はほとんどが乱層雲の弱い雨雲で構成される。そのため、しとしととあまり強くない雨を長時間降らせる。
しかし、上空の寒気や乾燥した空気が流入したり、台風や地表付近に暖かく湿った空気(暖湿流)が流入したりすると、前線の活動が活発化して、積乱雲をともなった強い雨雲となり、時に豪雨となる。
どのようにして梅雨は終わるか
小笠原高気圧がだんだんと強くなってくると、梅雨前線は北へ押し上げられて、梅雨は明けて夏になります
前線の種類をあげ,断面図を図示で各々説明せよ。
温暖前線 :
暖気が寒気に這い上がってできる前線。
乱層雲という横長の雲をつくり、広い範囲に長い時間、弱い雨を降らせる。
通過後は気温が上昇、東寄りから南寄りの風になる。
寒冷前線 :
・寒気が暖気に潜り込んでできる前線、
・積乱雲という縦長の雲をつくり、狭い範囲に短い時間、強い雨を降らせる。
・通過後は気温が低下、南寄りから北よりの風になる。
停滞前線 :
・寒気と暖気がぶつかり合って両者が互角で、動かない時にできる前線
・日本では6月の梅雨前線と、9月の秋雨前線がみられる。
閉塞前線 :
・「寒冷前線」が「温暖前線」に追いついてできた前線、寒冷前線の方が温暖前線よりも早く、追いつくことがある。
・温暖前線が寒冷前線に追いつくことはない。
・閉塞前線には寒冷型、温暖型の2種類ある。下記の図に示す2つの寒気のうち、どちらの方が気温が低いかで型が異なる。これは、冷たい空気ほど重たく他の空気のしたに潜ることが原因である。
寒冷前線の寒気が、前方の温暖前線の寒気にが潜り込んだ場合、寒冷型閉塞前線となる。寒冷前線と同様に狭い範囲に短い時間、強い雨を降らせる。
逆に、温暖前線の冷気が潜った場合は温暖型閉塞前線となる。温暖前線と同様に、広い範囲に長い時間、弱い雨を降らせる。
寒冷型閉塞前線の特徴は。寒冷型が日本で主となる理由は。
特徴については前問に記載。
日本付近では、大陸から新鮮な寒気が供給されるため寒冷型が多い。
霧の種類と発生原理を述べよ。
放射霧:
・地面からの熱放射によって形成される霧で、主に夜間や早朝に発生する。
・日中に地面が太陽の熱を吸収すると、夜になるとその熱が放射されて地面が冷却される。
・これにより、地面に接触する空気も冷却され、その結果として霧が形成されます。
移流霧(海霧):
・暖かい空気が冷たい海面の上を通過するときに発生する。
・暖かい空気が冷たい海水に接触すると冷却され、その結果として霧が形成される。
上昇霧:
・上昇霧は、空気が山や丘を上昇することによって形成される。
・空気が上昇すると膨張し冷却され、その結果として霧が形成される。
前線霧:
・温暖前線から降る雨が、前線の下の寒気内で蒸発し冷やされることで、霧が発生する。
蒸気霧:
・暖かい水面に冷たい空気が来ると、水面から蒸発が起こり霧が発生する。
高層天気図の種類(気圧,高度)とその目的・利用法を述べよ。
種類と利用法
<850hpa(地上1500m)>
地上に近いため、地上天気図では識別が難しい前線や気団の解析を行うことができる。また、下層の風の流れが分散している場所や集中している場所を調べることも可能である。
<700hpa(地上約3000m)>
中層雲の高さに相当するので、地上の降水現象の判断材料になる。
<500hpa(地上約5500m)>
対流圏のほぼ中間に位置していて、対流圏のほぼ平均的な空気の流れを見ることができる。台風の進路予報、低気圧の進路予報に利用される。
<300hpa(地上約9000m)>
対流圏の上部にあたり、ジェットストリームと圏界面の解析に使われる。
実際に船ではどのように利用されていたか。
船舶で使用しているのは500hpaである。500hpa面は対流圏のほぼ中間の高度に位置し、大気構造を代表する高さであるとともに、500hpa面の気圧の谷は1日に経度10度くらいの速さで東進するため、気圧計を追跡しながら2-3日の短期予報を行う場合に重要である。また、地上低気圧の進行方向・発達等の判断に使用する。
高層天気図には何が記載されているか
・風向、風速、気温、気温と露天温度の差
・等高線が実線、60m or 120mで引かれている。一定の気圧が各地でどの高さにあるかを測定し、それをつないだ線
・等温線が破線、6度 or 3度ごとに引かれている
・C(寒域)、W(暖域)、高気圧、低気圧、熱帯低気圧、台風が記入されている。
低気圧の発達の何を見て予想できるか。
・対流圏上部に達しない低気圧は、500hpa面の風の方向に進む。
・一般に500hpa面における地衡風速の半分の速さで進む。
・気圧の谷の西側では、低気圧は東進あるいは南東進するが。移動が遅くなる。
・気圧の谷の東側では、東北進する傾向を持ち、速度も速くなる。
・500hpa面の流れが地上の前線に平行なとき、この前線上で低気圧は発達する。
・500hpa面の強風等が地上低気圧の真上かすぐ北側を流れている時、低気圧は発達する。
・地上の低気圧と500hpa面の気圧の谷の間を通る等温線の感覚が周りに比べて狭いと、低気圧は発達する。
2018 年 7 月の台風 12 号は日本付近で異例の進路で北西へ進み、甚大な被害を与えたが、配布された地上及び高層天気図(500hPa)からその理由を述べよ。
当時の台風の針路は下記である。
この台風の異常な針路は、台風と寒冷渦(上空の高いところにある低気圧)による藤原の効果によるものと考えられている。
寒冷渦と台風はどちらも”反時計回りの渦”であるが、2つの渦が近づくと「藤原の効果」と呼ばれる相互作用を起こし、複雑な動きをすることがある。
多くの場合は2つの台風同士で「藤原の効果」が起こるが、寒冷渦でも同様である。
台風12号の場合、寒冷渦により台風の進路が西向きに曲げられた。
波浪図について説明せよ
気象庁では、漁船や商船などの船舶、海上で気象や海水象を観測するブイ、沿岸に設置された波浪計、地球観測衛星などによる観測資料を用いて北西太平洋と日本沿岸域の波浪の実況解析を行い、北西太平洋については外洋波浪実況図(AWPN)として、日本沿岸域については沿岸波浪実況図(AWJP)として発表している。
外洋波浪図では、波の高さ(有義波高)の分布を等高線で表示している。
また、波の向き、高気圧・低気圧の中心位置と中心気圧、前線の位置、船舶・ブイによる観測値及び、冬期には海氷域が示されている。
台風が発生している場合には、波浪図の左上に台風情報(台風名、台風番号、中心気圧、中心位置)が表示される。
沿岸波浪図では、外洋波浪図では表現できない日本沿岸のより詳しい波浪の状況を解析したもので、半島や島による影響(遮へい)を考慮している。波の高さ(有義波高)の分布を1メートル毎に実線で、0.5, 1.5, 2.5, 3.5メートルの等高線を破線で表示している。
各波浪図の見方については、下記を参照のこと。
気象庁 | 外洋波浪図の見かた (jma.go.jp)
気象庁 | 沿岸波浪図の見かた (jma.go.jp)
高層天気図で気圧の谷とは何か。どうしてそこでは天気が悪くなるのか。
<高層天気図での気圧の谷>
・等高度線が南側へ弧を描いて垂れ下っている部分
・気圧の谷が低気圧の付近に来た場合、低気圧は一般に気圧の谷に向かって進行する。
・気圧の谷が東西方向にできる場合は、天気は比較的持続性がある。
・気圧の谷が南北方向にできる場合は、天気の持続性はなく、天気は比較的変わりやすい。
大気の乾燥断熱減率と湿潤断熱減率についてを述べ,フェーン現象を説明せよ
乾燥断熱減率:乾燥した空気が上昇または下降するときに空気の温度が変化する割合を示す。乾燥した空気が上昇するとき、膨張し冷却される。逆に、乾燥した空気が下降するとき、それは圧縮され、温度が上がる。この温度変化の割合はおおよそ1度(セ氏)/ 100メートルである。
湿潤断熱減率:湿った空気が上昇または下降するときに空気の温度が変化する割合を示す。湿った空気が上昇すると、冷却され、水蒸気が凝縮して雲や霧を形成する。この過程で潜熱を放出し、空気の冷却を穏やかにする。したがって、湿潤断熱減率は乾燥断熱減率よりも小さく、おおよそ0.5度(セ氏)/ 100メートルとなる。
フェーン現象は、これらの原理に基づいている。フェーン現象は、風が山を越えて移動するときに発生する。風が山の一方の斜面を上昇するとき、空気は膨張し、乾燥断熱減率に従って冷却される。この冷却により、空気中の水蒸気が凝縮し、雲や雨を形成しながら上昇します。結果、湿度が高くなった空気は湿潤断熱減率に従い気温の下がり方が緩やかになる。空気が山の頂上を越えて反対側の斜面を下降するときには、雨を降らしたことで空気の水分は少なくなっている。つまり、空気が山頂を通り越してからは、乾燥断熱減率の範囲が長くなり、温度が上昇します。風下側の地域で予想外の暖かさや乾燥をもたらします。これがフェーン現象でである。
山を越えた風が乾燥し、暖かくなることで、山の風下側では予期しない暖かさや乾燥状態をもたらすことが特徴。
安定した大気,不安定な大気とはどういうことか。(湿潤断熱減率を交えて説明せよ)
安定、不安定とは
地表の暖められた空気(空気塊)が ある高さまで上昇した時、下記の3パターンの動きとなる。
安定 : 上昇した後、元の高度に戻る。
中立 : 上昇した後、その場に停止する。
不安定 : 上昇した後、 さらに上昇を続ける。この場合、空気塊が水蒸気を含んでいると、積乱雲が発生することがある。
空気塊の温度が周囲の空気より高い場合は上昇し、低い場合は下降する。
大気の状態は、安定、条件付き不安定、不安定と定められる。
絶対安定
上図のように、乾燥断熱減率(1℃/100mの率で温度変化)と、湿潤断熱減率(0.5℃/100mの率で温度変化)で断熱上昇する空気塊を上昇させたとき、周囲の大気の温度が二つの空気塊よりも高い場合、乾燥断熱減率の空気塊・湿潤断熱減率の空気塊の両方ともそれ以上上昇することはできず、元の高度に戻る。このような場合を、絶対安定という。
条件付き不安定
上図のような場合、湿潤断熱減率の空気塊は大気よりも温度が低く、上昇を続け積乱雲などを作るが、乾燥断熱減率の場合は300m付近で大気よりも低温となり、それ以上上昇しない。このように、空気塊の断熱減率に応じて安定と不安定が分かれる場合を、条件付き不安定という。
絶対不安定
上図のように、乾燥断熱減率・湿潤断熱減率二つの空気塊が、常に大気よりも高い温度となる場合、どの断熱減率の空気塊でも上昇を続けることとなる。このような場合を、絶対不安定という。
ブロッキング高気圧とは何か、発生要因と日本近海での例
偏西風が南北に大きく蛇行する場合には、 地上では大規模な高気圧が停滞することがある。
この高気圧をブロッキング高気圧といい、この様な現象をブロッキングという。 同じような気象状態が長期間継続して異常気象をもたらすことが多い。
偏西風の蛇行をもたらす要因の一つは、ロスビー波と呼ばれる大規模波動のエネルギーが伝わる波である。ブロッキング高気圧は、ロスビー波が大気の流れをブロックし、高気圧が停滞することで形成される。
日本では梅雨期にオホーツク海にブロッキング高気圧が形成される。
地衡風とはどんなものか。
地衡風(ちこうふう)とは、気圧傾度力とコリオリ力の釣り合いの結果生じる風である。摩擦力がほとんど働かない上層における風は地衡風に近い。
気圧傾度力は気圧の高い方から低い方へ向かって等圧線に直角に働き、コリオリの力は北半球では風の進行方向を向いて右向きに(南半球では左向きに)働く。
それゆえ地衡風は、等圧線に沿って北半球では気圧の高い方を右手に(南半球では左手に)見る向きに吹く。
なお、等圧線が屈曲している場合には、気圧傾度力とコリオリの力に加えて遠心力が働く。この三つの力が釣り合った状態で吹く風を傾度風という。
突風とは?どのようなとき起こるか。
突風は、突然強く吹く風のことを指す。突風は、一時的に非常に強い風速を伴い、周囲の風とは異なる速さや方向で吹くことがある。
・ 寒気の吹き出しによる突風(寒気突風)
冬季,季節風の吹き出し時に低気圧の後面に進入してくる寒気は,液状的に日本近海へやってくることと,下層から暖められることによって気層が不安定化して,突風となる。
・暖気の吹き込みによる突風
春先から春にかけて,日本海側を通る低気圧が急速に発達移動するときに,太平洋岸から本邦は低気圧の暖域に入り,南よりの強い風が吹く。それに伴って起こる突風である。春一番,フェーン現象がこれに付随している。
・不安定線に伴う突風(暖気突風)
不安定線は寒冷前線の先行現象として現れ,最初,温帯低気圧の暖域である寒冷前線付近に形成される。寒冷前線から離れるように東方へ移動しながら突風雷雨をもたらす。幅は,100kmぐらいで線上の狭いもので,寿命は短い。発達した低気圧に熱帯気団が進入しているとき,東シナ海周辺で見られる現象で,スコールラインとも呼ばれる。
・寒冷前線に伴う突風
寒冷前線に伴い,前線前後の風向・風速の不連続や前線通過中の寒気の侵入によって発生する。
高潮の要因,起きやすいタイミングについて述べよ。
高潮とは、通常よりも海水面が高く上昇する現象を指す。高潮が発生する主要な要因は以下の通りです。
潮汐:
地球と月、地球と太陽の重力相互作用により、海水面が定期的に上昇と下降を繰り返す。特に満潮時には海水面が通常よりも高くなる。
気象条件:
強風や低気圧、台風などの気象現象は、海面に対する大気圧を下げたり、海面を直接押し上げたりすることで、海水面の高まりを引き起こす。これは「高潮」と呼ばれ、洪水や浸水の原因となることがある。
海流や波:
海流や波の影響も海水面の高さに影響を与える。特に、風によって引き起こされる波(風浪)や、地震による津波などは、短時間で大きな高潮を引き起こすことがある。
高潮が起きやすいタイミングは、満潮時や新月・満月の時(大潮)、ならびに強い風や低気圧、台風が接近または通過する時である。また、海岸線の形状や地形によっても高潮の発生が影響を受ける。たとえば、湾や入り江では、海水が集まりやすいため高潮が起こりやすいとされている。
被害が大きくなりやすいのはどんな地形か。
平坦な地形:
海岸線が平坦な地域では、海水が遠くまで内陸に侵入しやすくなる。これにより、大規模な浸水被害を引き起こす可能性が高まる。
湾や入り江:
湾や入り江の形状は、海水が集中しやすく、高潮の被害を増大させる可能性がある。特に、湾口が太平洋に面している湾、湾口が狭く奥行きの深い湾、水深が浅い湾では、海水の高さが増す「共鳴」現象が起こりやすく、大きな高潮を引き起こすことがある。
低地:
海面よりも低い地形や沿岸部の湿地では、海水が容易に侵入し、広範囲にわたる浸水被害を引き起こす可能性がある。
その地形のどこを台風が通ると被害は大きくなるか。
台風の進行方向の右側:
台風の北半球における進行方向の右側は、風速が最も強い「右セミサークル」に当たる。このエリアを台風が通過すると、強風や高波、暴風雨などの被害が大きくなる。
沿岸部:
沿岸部では、台風に伴う高波や高潮による浸水、海岸侵食の被害が大きくなる。
起きやすいタイミング、何月が起きやすいか。またなぜか。
台風が多く発生する夏から秋にかけて(大体7月から10月頃)、台風に伴う強風や低気圧による海面の上昇で高潮が発生しやすい。特に、9月は日本近海で台風が発生・接近しやすい月であり、この時期に高潮による被害が増える傾向にある。
■荷役
閉鎖区画を知っているだけ答えよ。
・バラストタンク、清水タンク
・燃料タンク
・ボイドスペース
・コファダム
・カーゴタンク
・チェーンロッカー
・タンクホールドスペース
入域前に何を準備するか。どんな危険があるか
・十分な換気(酸素欠乏の危険、毒性ガスの危険)
・人員配置と連絡手段の確立、必ず2名以上で入る、マンホール付近に連絡係を配置
・リスクアセスメント
・適切な装具の装着(呼吸具、命綱、ガス検知器、安全長靴、ライト、ヘルメットなど)
・救助用具の準備(トライポッド、タンカー、酸素供給器、応急処置セットなど)
・艙内の酸素濃度の測定
測るガスを答えよ。
・CH4,CO, O2, H2S
なぜ酸欠状態は作られるのか。
・石炭を積んだホールドでは、石炭貨物と含有水分と酸素が結合して酸素が欠乏する
・チェーンロッカーでは、錨鎖が海水に濡れて酸素によって錆びることにより、酸素が欠乏する。
・塗装後のタンクでは、塗膜が乾燥する際に酸化現象がおき、酸素が欠乏する。