■マグネットコンパス
偏差・自差を説明せよ
偏差(Variation):
- 偏差は、磁気コンパスが指す「磁北」と地球の「真北」の方向のずれを表している。
- 地球内部の大きな磁石(仮定)により、磁北は真北からわずかにずれている。
- 偏差は「真北に対する磁北の偏り量と方向」で表されます(例:5°E、6.5°W)。
- 地域や経年によって異なり、確認方法はECDIS・紙海図のコンパスローズ・GPSで確認可能である。
自差(Deviation):
- 自差は、磁気コンパスが指す「磁北」とコンパスの実際の「北」の方向のずれを示している。
- 地域ごとに磁場の方向が異なるため、コンパス方位は各ボートごとに異なる。
- 船体または機体自体の磁性の影響を受けて磁気コンパスに生じる誤差。
- 自差は「コンパスの北」が「磁北」からどれだけずれているかを表している。
相互計算:
- コンパス方位から磁方位や真方位を求める際には、偏差や自差を考慮する。
- 磁方位(または真方位) = コンパス方位 ± 偏差(東偏差なら+、西偏差なら-)
- 磁方位(または真方位) = コンパス方位 ± 自差(東自差なら+、西自差なら-)
例えばコンパス方位が270度で偏差が8°Wの場合、磁方位は265°、真方位は257°となる。
用語説明
真北(しんぽく):ある地点を通過する経線あるいは子午線が示す北、つまり北極点の方向。地球の自転軸の北端を指す方位。
磁北:地磁気における北極への方向。磁気コンパスの示す北。地軸上の北(真北)とのずれ(磁気偏角)が存在する。
コンパスの北:磁気コンパスは常に磁北を指す。しかし、実際は周囲の船体構造物や金属類といった磁性体に反応して磁北を指さない場合がある。
磁気コンパスの指す北を「コンパスの北」、磁気コンパスによる方位を「コンパス方位」という。
マグネットコンパスにある誤差を挙げ説明せよ
器差誤差:
- 基線誤差
軸針受け及び外側のジンバル軸の方向の相対位置に依存する,コンパスボウル及びジンバルの構造上の誤差。 - 旋回誤差
ボウルを一定に保ちながら、360度コンパスを回転させた後に最初の停止点と比べて偏りが見られる誤差。何度も実施し平均値を使用するマグネットコンパスの旋回誤差とする。 - 摩擦誤差
カードを2度片寄せし,少なくとも10秒その位置を保持した後に放す方法で最初の静止点から偏っている角度。 - 方位測定具の装備誤差
ボウル上に方位測定具の中心を合わせて置いたとき,その鉛直軸は,軸針から0.5 mm以内になる誤差。 - バージリングの偏心誤差
バージリングに目盛りが書いてある場合、目盛りと軸針との間に生じるずれ、0.5mm以内になるように設定してある。
ここにコンパスの詳細写真貼る
自差誤差(Deviation):
- 磁気コンパスを設置してある船が持っている磁場による影響を受ける。
鋼鉄製の船舶自体が磁化及び他の電気機器が装備されています。これらが磁気コンパスに妨害磁力として影響を及ぼすため、自差が発生する。
自差は船の構造や装備によって異なり、建造後すぐに自差曲線(Deviation Curve)を作成し運用する。また約5度以上のずれがある時や一定の間隔で自差曲線を更新し正確な補正をし続ける必要がある。
自差修正は乗組員だけでも修正可能であるが、確実に行うには日本コンパスアジャスタ協会に修正を依頼し、自差修正有資格者に頼むことが出来る。
ここにDEVIATION CURVEの写真貼る
偏差誤差(Variation):
- 地球の磁場がほぼ南北方向にあり、正確に地球の自転軸にある北極点と南極点がS極・N極の頂点と一致していないため、地域ごとに磁場の方向が異なる。これが磁気コンパスの示す方向と本当の方向との差(偏差)となる。
偏差は地理的位置によって異なり、現在日本では 南鳥島(偏角0度)を除く全ての地域で西偏となっています。(沖縄県 の 石垣島 では約 −5 °W’ly、 北海道 の大部分では約 10 °W’ly)
北磁極は継続的に北西にカナダからシベリアの方向へ動いており、常に少しずつ偏差は変化している。
温度誤差(Temperature) :
- 磁気コンパスは温度に敏感で、温度変化により針の挙動が変わる。
地方磁気による誤差:
- 火山地域は磁気異常が大きい場所であり、火山活動によって磁場が変化する。
- 鉄鉱石やその他の磁性鉱物が豊富な地域では、地磁気異常が生じやすく、磁気コンパスに影響を与えやすい。例として、ブラジルやオーストラリアなどで起きやすい。
- 磁気赤道は地球の磁場が水平になる地域で、ここでは磁気コンパスの指針が安定しにくい。
- 都市部や工業地帯に接近すると鉄鋼構造物が多く磁場に影響を与える。
自差はどのような時に変化するか
- 変針し船首方向が変わった時
- 船位変化がある時
- 日時が経過した時
- 地方磁気の影響を受ける時
- 温度変化する時
- 荷役で積み荷を移動したりする時
- ドック等により船内構造物を移動させた時
- 船体に落雷を受けた時
- 船体に強い衝撃が加わった時
- 一つの針路を長く航海し変針した時
■ジャイロコンパス
ジャイロコンパスの2大特性とは何か。各々説明せよ。
X・Y・Z軸の周りを自由に回転できるようにしたこまを、3軸の自由をもつといい、ジャイロスコープとよんでいる。
ジャイロスコープには重要な二つの特性がある。
・方向保持性(回転惰性)
ジャイロの回転軸は空間に対して一定方向を保持し続ける性質。ジャイロを高速度で回転させると、他から回転軸の方向を変えようとする力(トルクtorque)を受けない限り、ジャイロ軸が絶対空間の一点をさし続ける性質。
・プレセッションの性質
回転軸に力を加えると、普通の物体と異なり力と直角の方向に軸の旋回が起こる性質。
高速度で回転しているジャイロに、その軸と一致しないトルクが作用すると、ジャイロ軸はその方向に向きを変えずに、新たに加えられたトルクの回転ベクトルの方向とジャイロのもつ回転ベクトルとが一致するように近道をとって軸の向きを変える性質。
ジャイロコンパスの2つの形式をあげ,その違い(利点、欠点)ダンピング方式を述べよ。
・スペリー系ジャイロコンパス
東京計器TG8000/8500
ジャイロ球の重心に働くトルクによってジャイロ軸を振揺させ、ピックオフから電気信号を用いてジャイロ球に追従・振揺させる。
ジャイロ球にはジャイロが1つだけ入っており、容器内の液体に浮かんでいる。その上端からサスペンションワイヤ(懸吊線)によって吊り下げられている。サスペンションワイヤの下端はジャイロ球の重心よりも上の位置でジャイロ球と結合されている。
このジャイロの指北端を東に向け、水平にして起動すれば、地盤傾斜の影響によって指北端は上昇、ジャイロ球の重心は吊り下げ位置よりも下にあるので水平軸回りに右回りのトルクが発生する。このトルクによりジャイロ軸は西側に向く。
また、ジャイロ軸は北側に向かって右回転しており、ジャイロのベクトルは指北端側へ向く。よってこれらのベクトルを合成すれば指北端が西側へプレセッションする。また、指北端から西側に達してからは逆方向へプレセッションし、この動作を繰り返してジャイロ軸は北を中心に振揺する。
・アンシューツ系ジャイロコンパス
横河電機CMZ900
ジャイロコンパスの転輪球内部には2個のジャイロロータが高速で回転している。
これらのジャイロロータは船体動揺・振動による誤差を打ち消しあうように組み合わせており、非常に高い指北精度を得ることができる。指北原理は右回転する大きなジャイロが入っているものと同様である。
ジャイロ球の重心は浮心位置よりも少し下方で、重心に作用するトルクによって指北作用を得ている。
ジャイロの指北端を東に向け水平にして起動すれば地盤傾斜の影響により、指北端は上昇し、ジャイロ軸NSはN’S’となり、重心はGからG’に移動する。
重力はG’をGに戻そうとしてトルクが働き、このトルクによるベクトルはジャイロの西側へ向く。また、このジャイロは北に向かって右回転であるので、ベクトルは指北端の方向となる。
これらのベクトルを合成すれば、スペリー系と同様に指北端を左方向へプレセッションさせることができる。
ジャイロコンパスの指北原理を説明せよ
回転惰性とプレセッションを利用している。フリージャイロに錘をつけ、その重力を利用している。ジャイロ軸に錘をつけると、ジャイロ軸の傾きによって錘の重力の方向が変わる。ジャイロ軸が上がった場合、重力によりG方向に力が働き、ジャイロ軸を押し下げる力Fが働く。これにより垂直軸を中心とした時計回りのプレセッションが生じる。
・赤道でフリージャイロの指北端を東にして水平に置く
・微笑時間経過すると、自転により軸は傾き、フリージャイロの錘の重力は真下より若干傾いた方向に働く。ジャイロの指北端に力が働いたこととなる。
・力Fにより垂直軸回りにプレセッションが発生し、指北端は北方向に回転する。
・ジャイロは北方向にプレセッションを続ける。北方向にプレセッションし続けるためには、指北端は常に水平より上向きで、力Fを受けなければならない。
・指北端は北を向く。
・北を向くまで指北端は水平より上である必要があるが、北を向いた後もプレセッションが働き続け、指北端は西に向き始める。すると、反対のプレセッションを起こして北を向き、通り越して東へ向き始める。これを繰り返してしまうので、北を向いて静止する装置(制振装置)をつける必要がある。
ジャイロコンパスの誤差の種類
速度誤差、変速度誤差、動揺誤差、旋回誤差、緯度誤差
・速度誤差
航行する船舶は、地球の周りを回転運動しており、これによって地球の自転以外の影響を受け、ジャイロ軸の静止点誤差を生じる。これが速度誤差である。
速度誤差は船舶の速度、緯度、針路によって変化し、速度と緯度については自動で修正されるが、針路については手動で修正する。針路は東西の場合はゼロ、北の場合は西偏、南の場合は東偏となる。
・変速度誤差
船舶が速度を変えると、新しい速度誤差にすぐに対応できず誤差を生じ、これを変速度誤差という。同速度で針路を変えた時にも、南北方向分の速度が変化するので速度誤差を生じる。
船舶が航行している時は、速度誤差に対応してジャイロは静止している、新しい速度誤差が発生した際にすぐにジャイロ軸がその誤差に対応し静止すれば良いが、加速度の為に水平軸・垂直軸周りにトルクを生じる。これによってプレセッションを起こし、制振装置によって新しい静止点に収斂するようになる。静止までの時間は3時間を要するので、その間不定誤差を生じる。
・動揺誤差
船舶が動揺することで加速度や遠心力が発生し、ジャイロにトルクが発生し加速度誤差や遠心力誤差を生じる。これらを合わせて動揺誤差という。誤差は4隅点(北東・南東・北西・南西)で最大になり、4方点(東西南北)でゼロになる。
スペリー系では、容器内の液体の粘性により流動を抑制すると共に、ジャイロ球の重心が浮心(中心)と一致するように調整されており、動揺誤差は生じない。
アンシューツ系ではジャイロ球が外球またはコンテナの支持液の中に浮かんでおり、ジャイロ球の内部にある2個のジャイロを連結し、傾斜の周期を大きくしているので、短い動揺周期のトルクが作用しても影響がなく、ジャイロ軸がほぼ水平状態保持できるようにして動揺誤差を防止している。
・旋回誤差
船舶が旋回したときに垂直軸周りに摩擦などトルクを与える原因があると、プレセッションに誤差を生じ、これを旋回誤差という。
スペリー系で最新のものは摩擦のない構造の為、発生しない。
アンシューツ系ではセンターピンなどの摩擦がなければ生じない。
・緯度誤差
スペリー系のジャイロコンパスの制動装置では、見かけの静止点を得るためにジャイロ軸が俯角、子午線に対して偏角を持っている。この偏角が緯度誤差である。スペリー系特有の誤差とされてきたが、現在の機器では緯度誤差を生じないような工夫がされている。
ジャイロコンパスの誤差がそれぞれ3軸のベクトルにどのように影響を及ぼすか説明せよ
ジャイロエラーの検出方法を述べよ。
出没方位角法
<方法>
この方法は太陽のみで観測できる。天体(太陽)の中心真高度が0度のとき、方位鏡でそのコンパス方位を測定し、天測暦の出没方位各表から求めた真方位と比較して誤差を求める。
観測に必要なものは、①観測者の緯度・経度②赤緯(天測暦を用いて得る)
<測定時機>
天体の中心真高度が0度のとき。
眼高差、地上気差、視差および視半径を改正すると、太陽はその下辺高度が約20’となる。
つまり、その下辺が視水平から20’だけ上にあるとき=視半径の約1.5倍太陽が浮き上がって見える時が、真高度0度のときである。
計算が簡単なことが利点であるが、天体が太陽のみに限られ、観測時機が真日出没時のみであることが欠点。
月の場合は真中心高度が0度のとき、その上辺高度は約-3’となる。つまり視水平以下となり、見ることができない。恒星では一日の角度の変化が少なく、出没のタイミングが限られる。
時辰方位角法
<方法>
天体のコンパス方位を測定すると同時にクロノメータを読み、測定時の時角、緯度、赤緯を用いて天体の真方位を算出する。計算にはSDh表などが用いられる。
観測に必要なものは、①観測者の緯度②赤緯③時角
<利点>観測時機に制限がなく、利用範囲が広いことが利点。測定誤差を小さくするためには天体の高度があまり高くない出没に近い時機を選ぶと良い。
<測定時機>
方位変化が少なく、高度もあまり高くない時機がよい。
方位変化が少ない時機
・緯度と赤緯が同符号で、赤緯>緯度(赤緯が緯度より大きい)場合は、天体が東西圏に最も接近したとき(最大方位角)
・緯度と赤緯が同符号、赤緯<緯度(赤緯が緯度より小さい)場合は、天体が出没時と東西圏の中間、にあるとき。
・緯度と赤緯が異符号のときは、出没時付近。
天体高度
一般的には天体高度があまり高くない時で、高度27°付近が最も良い。高高度の天体は避ける。
<北極星方位角法>
北極星は天の北極の近くに位置し、極距離(北極星と天の北極との角度の差約53’で極のまわりを23h56m4sで一周している。測定時の緯度と時角を要素として天測暦の北極星方位角法から真方位を求める。
観測に必要なものは、①緯度②時角
北極星は2等星と暗い恒星で、薄明時など水平線の明るい時機に肉眼及び六分儀の視野にとらえることは困難である。六分儀のインデックスバーに推定緯度と北極星緯度表の第一改正値の符号を逆転させ、値を加減して合わせると容易に発見できる。
<トランジット(重視線)による方法>
導灯などは、海図に重視線の方位が記載されている。海図記載の方位と、実際にジャイロコンパスで測った方位を比較して、ジャイロエラーを求める方法
<防波堤を用いたジャイロエラーの測定方法>
防波堤が、船の正横あたりに来て、一直線に見えた瞬間に、その方位をジャイロコンパスで測定する。
その後、海図で岸壁の直線部分の方位を測定して、比較する事によりジャイロエラーを求める方法
<岸壁の方位を用いる方法>
停泊している岸壁の法線の方位を、海図上で測定する。
その後、ジャイロコンパスが示している船位方位を測定し比較する。
コンパス方位が99度、求めた方位が100度の場合、ジャイロエラーの値はいくつか
修正後の値が真方位となる様に修正するので、99°+1°=100°(つまり+1°となる)
ジャイロコンパス及びリピーターコンパスは船のどこにあるか
基本的にジャイロコンパスは、船舶の中心線上に設置され、操舵位置からその表示を確認できるようなところに設置されている。
一般的な船舶では、ブリッヂ操舵装置の中に1台搭載されている。
また、大型の危険物積載船等では、2台設置されている船舶もありもう一台は無線室等に設置されていることが多い。このコンパスは、ブリッヂ操舵スタンドでNo.1とNo.2ジャイロコンパスとして切り替えることが出来る。
具体的な船のタイプや構造によって、リピーターコンパスの設置場所は異なりますが、基本的な設置場所は以下である。
・ブリッヂ操舵スタンド前
・両ウィングに1台ずつ
・操舵機室内(Steering room)
マスターコンパスとリピーターコンパスの整合方法を説明せよ
ジャイロコンパスは、使用するどれくらい前から始動するのがいい
古いタイプだと約4時間
新しいジャイロコンパスの静定時間は、機種や技術によって異なりますが、一般的には数分から数時間までの範囲である。
具体的な静定時間は製造元やモデルによって異なるため、詳細な情報を知りたい場合は製品の仕様書や取扱説明書を参照することをおすすめする。
- 起動: ジャイロコンパスを起動する際、方位磁石などを参考にして北の方にジャイロ軸を向けて回転を始める。
- 振動と静定: 静止点を中心に、水平および垂直方向に減衰振動を繰り返しながら真北を向いて静止します。この静定までに時間がかかり、古いタイプでは、静定までに数時間を要していた時期もありましたが、技術の進歩により大幅に短縮されている。
起動後は制振シーケンスに異常が無いことなどの確認。4時間から12時間は静定確認(真方位に対しての誤差測定及び補正等)各所レピータ点検(追従、回転方向、照明装置など)を行います。
■オートパイロット
オートパイロットの警報(Alarm)の種類を挙げよ
- オフコースアラーム(Off course alarm)
オートパイロットに予備コンパスが接続されている場合、自動操舵中(オートパイロット)に予備コンパスによる針路が逸脱していないか監視することが出来る。
普段使用しているジャイロコンパスが故障し、自動操舵システム使用時に設定したコース上を航走していないことを予備コンパスで検出し警報を出すアラーム。 - コース逸脱アラーム(Course deviation alarm)
自動操舵での設定コースと自船の船首方位が設定リミット以上でかつ、設定した時間以上継続した時のアラーム。 - 電源喪失アラーム(Power fail alarm)
100V AC無電圧警報
以下舵取機のAlarmを参考までに挙げる。
- オートパイロットで操舵中、方位入力が3秒喪失又は、無効なデータを受信した場合
- オイルタンクの低油面異常アラーム
- アクチュエーター異常のアラーム
- ハイドロロックアラーム
- ポンプの過負荷以上
- 舵角のフィードバック異常
- 自動操舵中のヘディングコントロールシステムの電源喪失アラーム
- ハンドステアリング中のエンコーダ異常検知
- ハンドステアリング中の指令信号異常等
用語説明
アクチュエーター:直訳で「作動させるもの」。駆動装置とも呼ばれ、機器を任意に動かすためのデバイス。電気式、油圧式、空気圧式等様々なアクチュエーターがある。
ハイドロロック:「流体固着現象」と呼ばれ、方向切換え弁などで異物やスプール(油圧の方向転換する装置)の偏心などにより、摩擦抵抗が増大して切り替えが出来なくなる現象。
エンコーダ:機械的な移動量・方向や角度をセンサーで検出し、情報を電気信号として出力する装置
どのような時に手動操舵に切り替えるか
- 船舶が輻輳する海域
- 出入港時
- 航路及び水路内
- 他船と危険な見合い関係がある時
- 浅水域や障害物など座礁するような恐れがある海域
- 霧などで視界制限状態の時
- 潮流や風など外的要因が大きい時
- 緊急時(火災、浸水、人員の海中転落時等)
オートパイロットが故障した時の対処方法を説明せよ
操舵不能時になった場合、警報を確認し原因の確認を行う。
- 操舵機に関する警報は、操舵機を使用していない操舵機に切り替える。
- システムに関するアラームであれば、手動操舵に直ちに切り替える。
- 手動操舵も不能であればNFU(ノンフォローアップ・無追従操舵)に切り替える。
以上の対策を実施しても操舵不能の場合、操舵機室からの直接操舵(非常用操舵)を行う。
基本的には、アクチュエーターの電磁弁やサーボシリンダーを操舵機室で直接制御するが、油圧ポンプ自体が停止している場合もあり、この場合は油圧回路を切り替え、人力での油圧操舵を行うことも想定する。
また、ブラックアウト時では、非常用発電機が起動し操舵機に供給されるが操舵機2系統のどちらかに供給される仕組みになっているので、事前に確認が必要。(筆者乗船船舶はいつもNo.2操舵機)
非常用操舵は、ブリッヂとの連絡が重要で普段からブリッヂとのコミュニケーション体制を整えることが重要である。また、操舵機室内にはリピーターコンパスも設置されており、誤差がないか定期的に確認をする。
用語説明
電磁弁:ソレノイドバルブ(Solenoid Valve)とも呼ばれ電磁石と弁を組み合わせた装置で、電磁石(ソレノイド)への電流をオン・オフにすることで流体の流れを制御するもの。接続個数を増やし、流体方向を切り替えるために設置されているものもある。
サーボシリンダー:モーターの回転運動を直線運動に変換するシリンダー
オートパイロットの調整にはどのようなものがあるか。また説明せよ。
① 舵角調整
Set Courseに対するHead Courseのズレ(偏角)に対してどのくらい舵を切るかの調整。
Condition(速力、トリム、喫水)などの変化に応じて舵の効き方が異なることを考慮して、調整する。
② あて舵調整
Head CourseがどのくらいSet Courseに戻ったら舵を中央に戻すかの調整。
偏角のみならず回頭角速度に比例した舵角を加味すると、実質的にあて舵として効果がある。
舵角調整と同様に、Condition(速力、トリム、喫水)などの変化に応じて舵の効き方が異なることを考慮して、調整する。
③ 天候調整
ヨーイングに対して、舵角のあそび(舵を自動で取らない範囲)の幅を決める調整のこと。
荒天の場合は舵にかかる抵抗が大きく、それによる速力低下も大きくなるので、このような調整がある。
■ログ(船速計)
電磁ログの測位原理と特徴を述べよ
フレミング右手の法則(運動方向、磁界の方向、誘導起電力の方向)を利用した船速計。
磁界と誘導起電力が直角に交わるように電極を設けたセンサーを船底に設置すると、海水が導体となり、その海水は船の運動とは反対方向に運動することから、船速に比例した誘導起電力が生じ、誘導起電力を計測することで対水速力を求める。得られる速力は対水速力のみである。
電磁ログの中間誤差調整について説明せよ
速力に比例しない不均等な速力表示誤差を修正するための調整。
ドップラーログの原理と特徴を述べよ
ドップラー現象は、近くを通る救急車などの音源が近づくときと遠ざかるときで音の高さが変わる現象である。
音の変化、つまり周波数の変化量(ドップラー偏位量)が音源と聞く人の距離の変化率に比例することを利用して、音源の速さを求めることができる。
船の底に取り付けられた超音波受信器から海中に向けて超音波を発射し、その反射波に含まれるドップラー偏位量を測定することで、船の速さを測定することができる。
ある物体から発射された速度cの音波が、速度vの船で受信されたとき、受信周波数frは発射周波数ftと異なり、その差fdは
fd=fr-ft=(2×ft×v)/c
となる。このとき、ftとcは既知の数値なので、frを測定すればvを求めることができる。
■レーダー
レーダとは,どのような性質を利用して何を測る機械か
Radar(Radio Detection and Ranging)
レーダーは電波をパルス波にしてアンテナから発射する。
物標に届いたパルス波が反射し、アンテナで再び受信し映像にする装置である。
電波を発射し、反射波を受信するまでの時間と、アンテナ方向から物標の方位を測定することで、その位置を知ることができる。
レーダーで使われる電波の種類を挙げよ
船舶レーダーは、小さい物標も検知できるようマイクロ波(SHF)と呼ばれる波長が短い電波を使用する。
- X-Band:波長3cm、周波数9410MHz±30MHz
- S-Band:波長9cm、周波数3050MHz±20MHz
X・Sバンドについて説明せよ
- Xバンドは、周波数が約10 GHz、波長が約3 cm
この高い周波数により、高解像度で鮮明な画像が得られますが、降雨減衰(電波が降水により消散する現象)による影響が大きいため、雨の後ろ側で物標の正確な検知が難しくなることある。 - Sバンドは、周波数が約3 GHzで、波長が約10 cm
Sバンドは雨や霧の影響を受けにくく、観測が安定して行える。
波長が長くXバンドより、解像度が悪くなる。
方位拡大効果とは何か
方位拡大効果は、レーダースコープ上で物体が実際の大きさよりも大きく表示される効果の事である。
具体的には、レーダーは360°回転して物体を検知しており、物標がビーム幅にある間に反射波が受信されるため、アンテナ(空中線)が物標に正しく向く1/2ビーム幅離れるまで続くことで、映像面では物体の両端がそれぞれ1/2ビーム幅の手前から反射波が受信される。この状態が物体から1/2ビーム幅は習えるまで続くことで、レーダー映像では物体の両端がそれぞれ実際の物体の幅θ2より1/2ビーム幅θ1ずつ拡大されたものが表示される。
用語説明
メインローブ::アンテナの主要な放射方向を指す部分で、最も強力な放射が行れる。このメインローブが狭いほど周波数の分解能が高くなる。
サイドローブ:メインローブ以外の方向にも放射される余分な放射。サイドローブは、アンテナの指向性において望ましくない部分で、通常はメインローブよりも弱い放射を表す。
水平ビーム幅:アンテナの放射方向において、メインローブがどれだけ広がっているかで具体的には、水平ビーム幅はメインローブの角度範囲を表す。
アンテナの水平ビーム幅は、アンテナの設計や形状、使用する電波の波長によって決まっており、一般的に、アンテナの長さと波長の関係に基づいて計算される。
例えば、Xバンドのレーダー・アンテナの場合、水平ビーム幅はアンテナの長さと波長の比率から求めることができる。
アンテナの長さをL、波長をλとすると、水平ビーム幅θhは以下で表される
この式からsin−1は逆正弦(アークサイン)関数を表しており、アンテナの長さが大きいほど、水平ビーム幅は狭くなる。
CCRPとは、位置はどこか
(Consistent Common Reference Point)
CCRPとはECDISやレーダーに表示されている本船位置のことである。例えば、AISに表示される他船の位置は、このCCRPの位置が表示されており、一般的には船橋中心であることが多い。ただし、CCRPを船体中心など任意位置に設定することも可能である。
Radar 画面上の方位表示方式には何があるか。
・North Up(真方位表示)
表示画面の中心からその頂部を結ぶ線が真北を示す方式。
映像と海図の対比が容易となる。
変針やヨーイングしている際、映像が触れ回らないので、映像がぶれることなく、正確に方位測定を行うことができる。
・Head Up(相対方位表示)
表示画面の中心からその頂部を結ぶ線が船主方向を示す方式。視認している物標と映像との方位関係が同一となるため、物標と映像の対比が容易。変針やヨーイングにより映像がぶれることがある。
・Course Up(針路表示)
表示画面の中心からその頂部を結ぶ線が予定の針路方向を示す方式。設定針路が固定されるため、ヨーイングによる映像のぶれはないが、設定針路が変わる度にコースを設定しなおす必要がある。
レーダーがマイクロ波を使用する理由を述べよ
マイクロ波は電波の分類の中で、波長が短い方に分類される。その特徴は次のようなものがある。
波長が短いほど、
・直進性が良い
・鋭いビームを作りやすい
・小さい物標からの反射が強い
・外部からの混信や雑音が少ない
・海面反射による影響を少なくすることができる
・短いパルス波を得ることできる
レーダーにおける対水速力、対地速力に関して
対水安定 :
自船の針路・速力としてジャイロコンパス等による船主方位と対水速力を使用することをいう。
画面に表示される他船のベクトルは海面に対する運動を表すため、潮流の影響等にかかわらず目視による見合い関係と一致する。
対地安定 :
画面に表示される真ベクトルは対地運動を表す為、潮流等の影響がある場合には、目視による見合い関係と一致しないので注意しなければならない。
場面によって、対地表示と対水表示どちらを使用するべきか異なる。場面ごとの使い分けについては、下記ページを参照されたい。
/航海士/Radar のベクトルって実務上どう使っているんだい!|ウクレレ航海士 (note.com)
新造船のレーダ据付時の注意事項について
・起動方法
・XバンドとSバンド機器の確認
・電子カーソル
・VRMの使用方法
・ARPAの使用方法、TMとRMの使い分け。
・船体構造による斜影の有無
・最小探知距離
・映像の方向に誤差がないか。
・船体構造による反射の有無など
レーダ電波の水平ビーム幅とは何か。映像拡大効果とどう関係があるか、水平ビーム幅はいくらか
レーダー電波は水平方向と上下方向にある程度の幅を持っている。水平方向の幅を水平ビーム幅、垂直方向の幅を垂直ビーム幅という。
水平ビーム幅はアンテナの水平長により大きく異なる。
Xバンドレーダーで、水平300cmの長いアンテナがあるが、この場合水平ビーム幅は0.75度。また、逆にビーム幅が広いレドームタイプのアンテナでは、水平長40cmという超小型のものがあるが、この場合の水平ビーム幅は5.7度と広くなっています。ある程度拡がりを持った物標は、水平ビーム幅の半分ずつ外側へ広がった映像となる。
垂直ビーム幅は一定の幅に設定されている。垂直ビーム幅はピッチングやローリングにより、レーダー探知に大きく影響を受けない角度としてあり、大体20-25度の範囲。
レーダーのみで船位決定する際、距離と距離、距離と方位、方位と方位で最も正確な方法はどれか。
距離と距離。レーダーの距離は正確であるが、方位は映像拡大効果により誤差(大体1~2°)があるため。
レーダーの方位よりも距離を測定した方が精度が良い理由を述べよ
- 信号の伝播速度の一定性:
- 電磁波(レーダー波)は真空中で光速で伝播する。したがって、距離の測定は信号の送信から反射までの時間を計測することで行える。
一方、方位の測定はアンテナの向きを変えて信号の強度を最大化することで行われるが、信号の強度は障害物や気象条件によって変動するため、方位の精度は距離の精度よりも低くなる傾向となる。
- 電磁波(レーダー波)は真空中で光速で伝播する。したがって、距離の測定は信号の送信から反射までの時間を計測することで行える。
- 反射体の特性:
- 距離測定は、反射体(船舶、岸壁、他の物標)からの信号の往復時間を計測することで行われる。この方法は、反射体の特性に依存せず、一定の精度を保つことが可能。一方、方位測定は、反射体の形状、材質、角度に影響される。特に、反射体が小さく、角度が変化する場合は、方位の精度が低下する。
- 多重反射と干渉:
- レーダー信号は複数の反射体からの反射を受けることがあり、これにより方位の測定に干渉が生じ、精度が低下する。距離測定は、最初の反射体からの信号を計測するため、この問題を回避できる。
総括すると、距離測定は信号の伝播速度と反射体の特性に基づいて行われ、方位測定よりも信頼性が高いと考えられる。
距離誤差、方位誤差について述べよ。
<距離誤差>
・距離目盛による誤差は約2%程度である。
<方位誤差>
水平ビーム幅による映像拡大効果により、ある程度拡がりを持った物標は、水平ビーム幅の半分ずつ外側へ広がった映像となる。約2度ほどの誤差を持つ。
レーダの偽像の種類をあげ,ホワイトボードで説明せよ。
<多重反射による偽像>
自船と物標が1nm以内の距離に接近して並行すると、物標のレーダー電波の反射強度が強く、レーダー電波が自船と物標の間を2-3回往復することがある。この現象を多重反射による偽像という。正常の位置に現れる映像の外側に、同一方向・同一間隔で現れる。
<サイドローブによる偽像>
アンテナから発射される電波のうち、アンテナの向いている方向(メインローブ)以外にも、わずかにサイドロープが発射されている。反射の強い物標が近距離にある場合、自船のレーダーのサイドローブで探知してしまうことがある。この場合は、その物標と距離は同じでも、方位はメインビームの方向に映像が現れるので約90°違った位置に現れ、全く物標のない場所に偽像として現れる。
<自船以外の構造物がの鏡反射による偽像>
陸上の構造物や、海上に架けられた橋などが鏡となって、付近にある物標の偽像を鏡となった構造物の後方に現す場合がある。陸上の構造物が鏡となる場合には、偽像はその背後の陸地の映像の中に生じるから問題とはならないが、海上に架けられた橋が鏡となる場合には、方向はその橋の反射点の方向で、背後の海域に、距離は構造物と実像との距離とを加えた距離に偽像が現れて、あたかもそこに物標があるように映り、航行上の障害として現れることがある。
<自船の構造物の鏡反射による偽像>
船の煙突やマストがレーダーの空中線に近いときには、レーダーから出た電波が一度煙突などに当たって他船に行き、その他船で反射した電波が再びその煙突などに当たってから受信される場合がある。このような場合は、レーダーの空中線からみて、煙突等の鏡となった構造物の方向で、距離は自船から他船までの距離と殆んど同じ場所に偽像が現れる。
<第2次(3次)掃引偽像>
第2次掃引偽像とは、スーパーリフラクションやダクト状態で発生しやすい現象の一つ。これらは主に陸地で囲まれた海面で夏季に起こる。通常、レーダースコープでは、最大探知距離よりも遠い物体からの反射波が帰ってきても、掃引が停止しているときには輝点が中心に戻っており、映像にはならない。しかし、さらに遠方の物体から強い反射波が戻ってきた場合、その時点で次の掃引が既に始まっていれば、次の掃引線上に輝点が現れることがある。このとき、輝点は第2次掃引偽像と呼ばれ、方位は大まかに正しいが、距離が実際よりもかなり小さく表示される
スーパーリフラクション、サブリフラクションについて図示説明せよ
<スーパーリフラクション>
現象 :
電波が標準より下に屈折してレーダー直視距離が増大する現象。下層大気の屈折率が標準より大きいことで起こる。
起こる場合 :
・暖気が寒気の上方にあり、高度と共に温度が上昇する場合(気温の逆転)
・高度があがっても、温度の低下が緩やかな場合。
・高度とともに相対湿度が減少している場合。
<サブリフラクション>
現象 :
電波が標準より直進したり、上方へ屈折するために、レーダー直視距離が減少する現象。下層大気の屈折率が標準よりも小さいことで起こる。
起こる場合 :
・高度と共に温度の低下が激しい場合
・高度と共に湿度が増加している場合。
<ダクト>
スーパーリフラクションが生じる状態がさらに著しくなると生じる。この場合、下方に屈折して海面に達した電波が上方に反射し、また下方に屈折するというふうにしながら、非常に遠くまで到達する現象。
STC,FTCについて説明せよ。
STC : Sensitivity Time Control 海面反射抑制
海面の波に電波が海面反射し映像となると、その中にある物標を判別することが困難になり、これを除去する機能。強くしすぎると漁船やブイなど小さい物標の映像も一緒に除去してしまうので、注意が必要である。
STCはレーダー画面の自船周囲4nm程度に適用される。
FTC : Fast Time Constant : 雨雪反射抑制
雨や雪などから反射があると、しゅう雨性の雨であれば、島と同じような現れ方となり、その中の物標の判別が困難になる。これを除去する機能。
雨や雪は同じ場所に留まらず常に落ちていくため、受信信号を時間微分することで除去できる。STC同様、強くしすぎると他の小物標の映像も一緒に除去してしまうので注意が必要。
FTCはレーダー画面全体に適用される。
■ARPA
ARPA のロストターゲットした時に鳴るアラームの種類を述べよ
<Guard ring alarm>
自船の周囲に、その範囲以内に他物標が入った際にアラートする。手動で範囲(NM)を設定する。
<Lost target alarm>
ARPAでトラッキング中の物標を追尾できなかった場合、最後のトラッキング位置を示すと共にアラートする。<>
<Danger Target alarm>
CPA/TCPA以下の物標があるとアラートする。手動でリミット(NM, min.)を設定する。
<Full target alarm>
トラッキングしている物標がARPAの制限数を超えた場合にアラートする。
IMOの規則では、ARPA装置が同時に追跡できる最低ターゲット数が規定されており、少なくとも20個のターゲットを同時に追跡できなければならないが、実際の規定は地域や国によって異なる場合がある。
参考にFURUNO製のレーダーでは、最大100の物標のトラッキングが可能。
■GPS
GPSの測位原理について述べよ、どのような誤差があるか。精度は何メートルか
約30個の衛星が地球全体をカバーし、6つの軌道面に4機ずつ人工衛星が配置されている。
これにより、地球上のどこでもいつでも高精度の三次元位置の測定が可能となる。
測位は、衛星から発射された電波が利用者受信機に到達するまでの時間を測定し、その時間から衛星までの距離(擬似距離)を算出します。2つの衛星からの距離の差を計算することで、等距離差の点は2つの衛星を焦点とする回転双曲面上になります。
そして、もう一組の衛星対からなる回転双曲面との地球上における交点から、利用者の位置を求めることができます。
電波の速度は光の速度と同じ秒速約30万キロメートルです。
緯度経度を求めるのに衛星が二次元測位では3個以上,三次元測位では4個以上必要な理由は何か。
二次元測位では、3つの衛星が必要である。これは、2つの衛星からの擬似距離だけでは、受信機の位置を一意に特定することができないからである。3つ目の衛星からの擬似距離を利用して、受信機の時計の進み/遅れを補正することが必要になる。
同様に、三次元測位では、さらに1つの衛星からの擬似距離が必要となる。これにより、受信機の高度の情報も得ることができる。そして、4つ目の衛星からの擬似距離を利用して、受信機の時計の進み/遅れを補正する。
GPSでは対地・対水速力どちらが表示されるか
GPSでは対地速力が表示される。
対地速力は、地球の表面に対して相対的な速度を示す。
GPSの擬似距離とは何か、電波の伝搬速度はどのくらいか。
擬似距離は、GPS受信機が衛星からの信号を受信する際に計測される距離であるが、この距離は直接の物理的な距離ではなく、いくつかの誤差や影響を考慮した補正が含まれている。
これらの誤差や影響には、以下のようなものがある:
信号伝播遅延(Propagation Delay): 衛星からの信号が大気中を通過する際に生じる遅延。大気の密度や組成の変化によって影響され、これを補正する必要がある。
衛星時計の誤差(Satellite Clock Error): 衛星の時計が完璧でないための誤差。
受信機時計の誤差(Receiver Clock Error): 受信機の時計が正確でないための誤差。
多径伝播(Multipath Propagation): 受信機において、信号が直接受信されるだけでなく、建物や地形などに反射されてしまうことがある。
これらの誤差や影響を補正することにより、より正確な位置情報を得ることができる。
電波の速度は光の速度と同じ秒速約30万キロメートルです。
DGPSが無くなるがその代わりはなにか。
・DGPSは2019年3月に運用を終了した。
・IMOは船舶に外洋で100m以内、港内で10m以内の測位精度を求めているが、GPSそのものの測位精度が上がり(約10m)、DGPSを用いなくとも必要な精度が実現している。
・DGPS以外にGPSの補正情報が得られるシステムとして、運輸多目的衛星用衛星航法補強システム(MSAS)は、多くのGPS受信機で利用できる。(みちびきやひまわりがそれにあたる)
・準天頂衛星みちびきの運用が始まり、さらに測位精度が向上する。(約1mと言われている)
・DGPSロールオーバー(DGPS装置内の時刻管理が不能となる障害)により、DGPS装置の時刻管理が不能となり、補正情報の信頼性を担保できない状況となる。
GPSの誤差を示す指標を述べよ。
・GDOP(Geometric Dilution of Precision) : 3次元測位の場合の位置精度指標
・PDOP(Position DOP) : 2次元測位の場合の位置精度指標
・VDOP(Vertical DOP) : 高さに関するもの
・TDOP(Time DOP) : 時間に関するもの
・HDOP(Horizontal DOP) : PDOPの水平方向部分
スペクトラム拡散とは
GPS電波の送信方式。幅広い周波数帯域を狭い帯域に分散させる手法。
<効果>
・耐妨害性(Resistance to Interference):
通信において妨害を受けにくい。
・多重アクセス(Multiple Access):
同一周波数帯を利用でき、多重アクセスが可能。
・セキュリティ(Security):
信頼の秘匿性がある。特定の周波数で送信される信号を探知しやすくするためには、拡散符号を知らないと正確なデータを復元することが難しくなる。
・低インターシンボルインターフェランス(Low Inter-Symbol Interference):
拡散符号により、送信されたシンボルが時間的に広がるため、隣接するシンボルとの干渉が低減される。これにより、シンボル同士の干渉が抑えられ、通信の信頼性が向上する。
・抑制可能な干渉(Mitigatable Interference):
拡散符号が利用されている場合、一部の周波数での干渉が部分的にでも発生しても、正確なデータを復元できる可能性がある。これにより、通信の品質を保つことができる。
■AIS
AIS の説明及びARPA との違い
AIS(Automatic Identification System):
他船の情報(Call sign, 船名, GPS位置、針路、速力、目的地等)を表示することができ、当該船の意図を推察したりVHFで交信する時に有用である。また、肉眼やレーダーでは探知できない島影などにいる船舶を事前に探知することができる。しかし、他船がAIS信号をOFFにしたり誤った情報を発信する可能性があるため、AIS情報のみによって衝突のおそれを判断してはならない。
ARPA(Automatic Radar Plotting Aids):
レーダーにより物標を探知し、その情報を自動的にプロッティングし、相対運動や真運動を解析する。避航操船に必要な様々な情報を得ることができる。レーダーにより得た他船の相対ベクトル(針路、速力)と、自船の針路、速力によって構成させる速力から、他船の真ベクトルを求める。
AISの情報について静的情報、動的情報、事前に入れる情報を3つずつ挙げよ
- 静的情報:
- 船名
- 船の全長や幅
- 船の種類(貨物船、旅客船など)
- 動的情報:
- 位置
- 針路(進行方向)
- 速力
- 事前に入れる情報:
- 仕向港
- 到着予定時刻
- 航海関連情報(目的地など)
AISの情報が発信される頻度はどれくらいか
AISは、1分あたり4,500件以上のレポートを処理でき、送信頻度は最短2秒毎に行われ更新される。
下記クラスA・Bで速力毎に違うので記載する。
- クラスAトランスポンダ:
- 係留 / 停泊中:毎3分ごと
- 0-14ノットの航行:毎10秒ごと
- 14-23ノットの航行:毎6秒ごと
- 0-14ノットで航行中かつ航路変更中:毎3.33秒ごと
- 14-23ノットで航行中かつ航路変更中:毎2秒ごと
- 23ノット以上で航行中:毎2秒ごと
- 23ノット以上で航行中かつ航路変更中:毎2秒ごと
- クラスBトランスポンダ:
- 停止または2ノット以下で航行中:毎3分ごと
- 2ノット以上で航行中:毎30秒ごと
クラスA・Bとは
- クラスAトランスポンダ:
- クラスAトランスポンダは、大型船舶に搭載されるAIS装置の一種。
- 送信頻度は、船舶の速度に応じて変動し、船舶が航行中の場合、約2秒ごとに情報を送信する。
- 一意の識別、位置、進行方向、速度などの情報を提供可能。
- クラスBトランスポンダ:
- クラスBトランスポンダは、小型船舶に搭載されるAIS装置。
- 送信頻度は船舶の速度に応じて変動し、船舶が航行中の場合、約30秒ごとに情報を送信。
- クラスAと比較して送信頻度が低いため、範囲内の他の船舶に対して情報が遅れることがある。
AIS信号所はどこにあるか、またどこに多いか
AIS信号所は、海岸沿いに配置され、船舶に搭載されたAISトランスポンダからの情報を受信する。船舶の位置や動静を監視するために使用されている。
AISのカバレッジは、リアルタイムのマップでモニター可能であり詳細なカバレッジ情報は、以下のウェブサイトで確認可能。
■エコーサウンダー
エコーサウンダーの仕組みを説明せよ
エコーサウンダーは、船底から音波を発射し、海底や障害物に当たって反射した音波を検知することで水深や海底の形状を測定する装置。
- 音波の送信と受信:
- エコーサウンダーは水中に音波を送信し、この音波が水底や水中の物体に当たって反射する。
- 反射時間の計測:
- 反射された音波がエコーサウンダーに戻ってくるまでの時間を計測し、この時間から水深を求めることができる。
- 水深の計測:
- 音波は、大気中で約340(m/s)、水中で約1,500(m/s)で進む。
送信から受信までの時間を使って水深を算出する計算式は以下となる。
D(m)=1500×T÷2+d
D:船底から海底までの水深(単位:m)
d:本船の喫水(単位:m)
T:反射波が受信機に受信されるまでの時間(単位:秒)
- 音波は、大気中で約340(m/s)、水中で約1,500(m/s)で進む。
船舶のどこにエコーサウンダーは装着されているか
基本的に船舶のエコーサウンダーは船底の中央部に取り付けられる。以下理由。
- 均等な測定:
- 船底の中央にエコーサウンダーを取り付けることで、水深の測定が均等に行える。船の中央に装着することで、船首や船尾からの反射音波と同じ距離で測定可能。
- 安定性:
- 船底の中央は船体の最も安定した部分であり、中央に取り付けることで装置の安定性が向上し、正確な測定が可能となる。
- 障害物の影響を受けにくい:
- 船底の中央に取り付けることで、プロペラや船の他の部分との干渉を避けることが出来る。障害物の影響を受けずに正確な測定を行える。
エコーサウンダーの調整方法を説明せよ
以下、一般的な使用前調整の手順を挙げる。
詳しい調整方法は、各インストラクションに従い行う。
下図は、参考としてJRC JFE680モデル。
・モード設定をする。
→メーカーによって違うが、FURUNOはNAV. MODE、JRCはSTANDARD MODE等。
・画面表示色の設定
→船内環境(昼夜)に合わせて、エコー表示色や画面背景色を変更することが出来る。
下図でいうDAY&NIGHT設定。
・利得調整
音波の反射を正確に検出するため、適切な値に調整する。
下図でいうGAINの調整。
・記録用紙の確認
記録用紙が十分にあるか確認。記録開始時刻、位置を記録紙にネームペン等で記載する。検船等で確認されることもある。
・記録間隔設定
記録紙に水深が記載される間隔を設定する。基本的に浅水域では、約5分間隔での記録が推奨される。
水深状況や会社の規定に応じて記録間隔を設定する。
・アラーム設定
自船の喫水及びタイド、UKCを考慮したアラーム設定値を設定する。
下図でいう画面上に表示されているALERT1.2m。
・水深のレンジ設定
水深のレンジ設定を行う。この設定がしっかり行われていないと画面上に正しい水深が表示されないので注意する。メーカーによってはオートで変わるものもある。
下図では1-20mでの水深範囲が設定されている。
・画面輝度設定
画面上の明るさを調整できる。
下図でいうBRILL。
水中での音波の速度はどれくらいか、また音波にはどのような性質があるか
音波は、大気中で約340(m/s)、水中で約1,500(m/s)で進む。
送信から受信までの時間を使って水深を算出する計算式は以下となる。
D(m)=1500×T÷2+d
D:船底から海底までの水深(単位:m)
d:本船の喫水(単位:m)
T:反射波が受信機に受信されるまでの時間(単位:秒)
以下、音波の性質を速度で考えた時の性質
- 音速と減衰:
- 水中の音速は、水温に比例して変化し、水温が高いほど音速が速くなる性質がある。
- 水圧も音速に影響を与え、水深が深くなるほど水圧が高くなり、音速が速くなる。
- 指向性:
- 超音波は水中で非常に遠くまで伝わり、通常の音波と同じく約1500メートル/秒の速さで伝播する。
- 超音波は横方向に広がらず、振動体の正面へだけ伝わる性質を持っており、いわゆる「指向性」の性質を持つ。
- 音圧と可聴範囲:
- 水中の音圧は空中と比較して異なり、音圧は水の圧力の変動によって生じる。
- 人間の可聴範囲は約20 Hzから20,000 Hzまで、超音波はこれより高い周波数であり、クジラなどが感知できる低い周波数も存在する。
■天文航法
六分儀の使用上の注意を述べよ 六分儀を写真付きで説明する
- 太陽を直接見ない:
- 六分儀を使うとき、太陽の光を直接見ると目に重大な損傷を与える可能性がある。必ずシェードグラスを使用し、太陽を直接見ないようにする。
- 機器の調整:
- 使用前に六分儀の動鏡(インデックスミラー)と水平鏡(ホライゾンミラー)が直角になっているか確認し、必要に応じて調整する。
- 器差(インデックスエラー):
- 器差と呼ばれる各六分儀特有の誤差がある。この誤差を把握しておき、実際の計測の際に加減することが必要。
- 安定した姿勢:
- 正確な測定を行うために、安定した姿勢を保ち、体がふらふらしないように注意する。
- ディップ補正(眼高差:Dip of horizon):
- 地平線の高さと目の高さの違いを考慮して、ディップ補正を行う必要がある。
- 目盛りの読み取り:
- 測定後、目盛りを正確に読み取ります。弧(アーク)は度単位で、マイクロメータとバーニャで0.2分単位まで読み取る。
用語説明
ディップ補正:天測におけるディップ補正とは、観測者の目の高さ(眼高)によって生じる水平線の見かけの位置のずれを補正を指す。具体的には、海面からの高さがあるため、水平線が実際よりも低く見える現象を補正する。
例えば、船のデッキから観測し目の高さが海面より高くなるため、水平線が低く見える。よって、六分儀で測定した天体の高度は実際の高度よりも高くなってしまうので、ここでディップ補正を行わなければならない。
子午線正中で太陽を測る時、太陽がどの位置の時に測定するか
太陽の高度が最も高くなった時(南中した時)に測定する。
事前に南中する予想時刻を計算により求め、南中数分前から六分儀で太陽の高度を測定する。太陽の高度が上がると、六分儀を振った際に太陽が水平線より高い位置にくるため、その都度六分儀を調整して太陽下辺と水平線を一致させる。その動作を繰り返し、太陽が最も高くなった時の高度が南中高度であり、子午線正中で測るべき太陽の位置である。
天測(計算の流れと、星の見つけ方)
作成中
天体高度を測定する際、眼高が高い方がいい理由を説明せよ
- 水平線の見かけの位置:眼高が高いと、見かけの水平線が実際の水平線よりも低く見える。これにより、天体の高度を測定する際に、より正確な補正が可能になる
- 大気の屈折の影響:大気中で光が屈折するため、天体の位置が実際よりも高く見える。眼高が高いと、この屈折の影響をより正確に補正することができる。
- 視野の広がり:高い位置から観測することで、地平線までの視野が広がり、天体の出入りの時刻をより正確に測定することができる。
- 眼高差の計算式:眼高差=1.775√h-0.2(気温-海水温度)、hは眼高(m)
とすると、眼高が高くなるほど、平方根の差が小さくなり、誤差が減少する。例えば、√1と√2の差と√10と√11の差を比較すると、後者の方が差が小さくなる。これにより、眼高を高くすることで測定誤差を最小限に抑えることができる。
恒星略図の使い方について説明せよ
その地点で見ることができる常用恒星を把握するために用いる図を、恒星略図という。
使用方法は以下の通り。
①その地点の緯度経度を、世界時(UTC)に直す。
②その世界時を元に、Nautical Almanac(天測歴は廃刊されている「天測歴」等の廃刊について (mlit.go.jp))を使用し、0時の恒星時を求める。
③求めた恒星時に経度を足す、Eastなら+、Westなら-し、地方恒星時を求める。
④恒星略図を使用し、コンパスで90度を取っておく(コンパスをひろげて、90度にしておく赤道から極までの範囲と同じ)
⑤恒星略図の外周には、時間が記載されており、求めた地方恒星時に対応する。地方恒星時と、その地点の緯度の交点にコンパスの針を置き、90度の円を描くと、その円内はその地点で見ることができる常用恒星の概略になる。
均時差について説明せよ
均時差とは平均太陽と真太陽の南中時刻の差である。私たちの使用する時刻(日本標準時)は平均太陽が12時ちょうどに東経135度で南中するように作られている。つまり135度線が通る明石市では毎日12時に太陽が南中するはずである。しかしこれは平均太陽という太陽の動きを平均して1年中同じ動きをすると過程した太陽であり、実際の太陽の動きとは異なる。実際の太陽の動きは季節によって異なる。その結果、12時になっても太陽が南中しないことがほとんどである。この平均太陽と真太陽の南中時刻の差が均時差である。
用語説明
平均太陽:平均太陽とは、天の赤道上を一定の速度で動く仮想の太陽のこと。実際の太陽は地球の公転軌道が楕円であるため、見かけ上の動きが一定ではない。このため、季節によって1日の長さが変わってしまう。平均太陽は、この変動をなくすために考えられたもので、1年を通じて一定の速度で動くように設定されている。
この平均太陽を基にして決められた時刻を平均太陽時と呼び。これにより、季節に関係なく一定の時間を計測することができる。
航海中に天測で緯度を求める方法を説明せよ、また北半球で緯度を求める式を説明せよ
航海中に天測を用いて緯度を求める方法は、特に北半球では以下のように行う。
緯度を求める手順
- 太陽の高度角を測定:
- 六分儀を使用して、太陽が水平線からどれだけの角度で上がっているか(高度角)を測定します。この値を ( a ) とする。
- 赤緯を確認:
- 航海年鑑や天測暦を使用して、その日の太陽の赤緯(天の赤道からの角度)を確認します。この値を ( d ) とする。
- 緯度の計算:
- 以下の式を使用して緯度 ( l ) を計算します:l=90∘−a+d
- ここで、( l ) は緯度、( a ) は太陽の高度角、( d ) は赤緯。
例えば、太陽の高度角が45度で、赤緯が10度の場合、緯度は以下のように計算される:
l=90∘−45∘+10∘=55∘
この方法により、船の現在位置の緯度を正確に求めることができる。
最も測定時でいいタイミングは、メリパス(Meridian Passage)を利用して緯度を求める方法である。このメリパスは、太陽が子午線を通過するタイミング、つまり南中時の太陽高度を測定することで行う。このメリパスを用いて測定するのが、①太陽の高度が最も高くなるため測定誤差が少なくなり②南中時の高度を測定するだけでよいため、手順が比較的簡単③毎日同じ時間に測定できるため、データの一貫性が保たれるという利点がある。
太陽以外に自船の緯度を知ることの出来る天体を挙げよ
太陽以外にも、以下の天体を利用して自船の緯度を求めることができる:
- 北極星(ポラリス):
- 北極星はほぼ真北に位置し、その高度角は観測者の緯度とほぼ一致する。
特に北半球では非常に有用。
- 北極星はほぼ真北に位置し、その高度角は観測者の緯度とほぼ一致する。
- 月:
- 月の位置を利用して緯度を求めることができるが、月の動きは複雑であるため、正確な計算が必要。
- 惑星:
- 金星や木星などの明るい惑星も利用可能。これらの天体の位置は航海年鑑に記載されている。
- 恒星:
- 特定の恒星の位置を利用して緯度を求めることができる。例えば、シリウスやアルタイルなどの明るい恒星が利用しやすい。
太陽の正午観測で得た位置の線(緯度の線)を用いて船位を求めるときにはどうすればいいか
- 太陽の高度を観測: 太陽が正中(南中)する時刻に、太陽の高度を正確に観測する。この時刻は、太陽が観測地点の経度に対して真南に位置する瞬間。
- 位置の線を引く: 観測した高度を基に、位置の線(天測線)を引く。この線は、観測地点から見た太陽の高度が一定となる地点を結んだもの。
- 複数の観測を行う: 数時間後に再度太陽の高度を観測し、同様に位置の線を引く。これにより、異なる時刻での位置の線が得られる。
- 交点を求める: これらの位置の線の交点が、船の位置(船位)となる。交点が複数ある場合は、推測船位に最も近い交点を選ぶ。
出没方位角法について説明せよ(図示)
天体の中心真高度が0度のとき方位鏡でそのコンパス方位を測定し、天測歴の出没方位角表から求めた真方位を比較して誤差を求める方法である。
「天測暦」等は2021年8月発行の令和4年(2022年)版が最後の刊行となり、海上保安庁海洋情報部の「天文・暦情報」ページは2022年でサービスを終了した。 「天測暦」等の廃刊後に海洋情報部は、航海の目的で天測計算を行う必要がある場合には英国等が刊行している天測暦(The Nautical Almanac)を活用し、それ以外で天体の情報が必要な場合には国立天文台のホームページを参照するよう推奨されている。
出没方位角法で星と月が使えない理由を述べよ
出没方位角法では天体の真高度が0度の時の方位を測定する必要がある。太陽の真高度0度は視半径の約1.5倍太陽が浮き上がって見えるときであるが、月や星の真高度0度は天体の上辺が視水平以下にある状態となる。そのため月や星の真高度0度は測定することが出来ないので、これらを使用して出没方位角法を行うことはできない。
この現象は「視差」と呼ばれ、観測者の位置によって天体の見かけの位置が変わる現象を表す。特に、月のような地球に近い天体では、地心視差が大きく影響する。これにより、月や星の真高度0度の正確な測定が難しくなる。
用語説明
地心視差:地球の中心から見た天体の位置と、観測者の位置から見た天体の位置の違いを指す。
出没方位角法の他に天測でジャイロエラーを求める方法を説明せよ
時辰方位角法:天体のコンパス方位を測定すると同時にクロノメータを読み、測定時の時角、緯度及び赤緯を要素として、天体の真方位を算出する方法
北極星方位角法:測定時の時角と緯度を要素として、The nautical almanacのPolaris Tablesから真方位を求める方法
用語説明
クロノメーター(chronometer): 高精度な時計のことを指す。特に、船舶や航空機で使用される時計で、揺れや温度変化に影響されずに正確な時刻を示すことが出来るものを言う。
天体観測時、水温と気温の差が大きい時、どのような工夫をして観測するか
水温と気温の差が大きい場合には大気差が問題となる。そのため大気差がなるべく小さい高度付近の天体を選ぶことが必要となる。具体的にはできる限り高度の高い天体を測定することで誤差が小さくできる。
真日出没時と常用日出没時の違いついて説明せよ、また天測する場合はどちらを使うか
- 真日出没時:
- 太陽の中心が地平線(水平線)にかかった時を指す。
- 天文学的に正確な定義であり、計算や観測において使用する。
- 常用日出没時:
- 太陽の上辺が地平線(水平線)に接する時を指す。
- 実際の観測に基づいており、一般的に使用される定義。
この違いにより、真日出没はより正確な天文学的な観測や計算に適しており、常用日没は日常的な観測や一般的な用途に適している。
天測の計算には、通常真日出没が使用される。これは、太陽の中心が地平線にかかる時点を基準にするため、より正確に天文学的なデータを提供できるからである。
正午の太陽高度と赤緯から何が求まるか
正午の太陽高度と赤緯からは、その地点の緯度を求めることができる。具体的には、以下の関係式を使用する。
南中高度=90∘−緯度+赤緯
この式を使うことで、正午の太陽高度と赤緯が分かれば、その地点の緯度を計算することができる。
例えば、正午の太陽高度が60度、赤緯が20度の場合、緯度は次のように計算される。
60∘=90∘−緯度+20∘
これを解くと、緯度は50度となる。
横浜では太陽は12時に正中しないのはなぜか
横浜では太陽が正午(12時)に正中しない理由は、標準時と太陽時の違いにある。
- 標準時と太陽時の違い:
- 標準時は、特定の経度を基準にして設定された時間。日本では東経135度を基準にした日本標準時(JST)が使われている。
- 太陽時は、太陽がその地点の子午線(経度)を通過する時刻を基準にした時間。
- 経度の違い:
- 横浜の経度は約東経139.6度。これは日本標準時の基準である東経135度よりも東に位置しています。そのため、太陽が横浜の子午線を通過する時刻は、日本標準時の正午よりも早くなる。
- 均時差:
- 地球の軌道が完全な円ではなく楕円であるため、太陽の見かけの動きは一定ではない。このため、真太陽時(視太陽時)と平均太陽時(標準時)の間には「均時差」と呼ばれる差が生じる。この差も、太陽が正午に正中しない理由の一つとなる。
用語説明
真太陽時(Apparent solar time):実際の太陽の動きに基づく時間。具体的には、太陽が南中(真南に来ること)する時刻を基準にして計算される。真太陽時は、太陽の位置が毎日少しずつ変わるため、1日の長さが一定ではない。
平均太陽時(Mean solar time):太陽の動きの平均を取った時間。地球の公転軌道が楕円であることや地軸の傾きによる影響を平均化して、1日の長さを一定にしたもの。これにより、時計で測る時間と一致するように調整されている。
■地文航法
地文航法の航程線航法について説明せよ。具体的にどういった航法があるか。利点や特徴について説明せよ
航程線(Rhumb Line) : 針路一定で進んだ場合の船の航跡(針路一定の線)
・計算が容易、航路の作成も簡単にできる。
・船舶が輻輳する海域や狭い水道においても有用
距等圏航法について説明せよ
距等圏航法(Parallel Sailing)は、緯度が一定(針路090°・180°)の航程線上を航行する航海算法。
- 距等圏上を航走する場合は緯度が一定であるため、出発地点と到着地点の緯度は同じ。
- 航程は東西距に等しいため、東航の場合は正、西航の場合は負となる。
- 両地点の変経(経度の差)を計算し、東西距に換算する。
- 距等圏航法では東西距と航程が一致するため、航程を比較的簡単に求めることができる。
計算式は以下となる。
dep:東西距離(単位:°)
Δλ:変経(単位:°)
ψ:航行する緯度(単位:°)
中分緯度航法を説明せよ。
<平均中分緯度航法>
2地点の中分緯度を用いて、その2地点間の東西距と変経の変換を行い、 両地間の航程,針路,変緯,変経等を求める航海算法が中分緯度航法である。
A点からB点まで航行する時、航走距離(航程)の東西方向成分(東西距) と両地点を通る子午線の間隔が等しくなる緯度を両地点の真中分緯度 (True Middle Latitude)と呼ぶ。これに対してA点とB点の平均緯度を 平均中分緯度(Mean Middle Latitude)と呼び、平均中分緯度における 両地点を通る子午線の間隔は、A点からB点までの東西距にほぼ等しくなっている。
そして、東西距と変経の変換を行う場合に平均中分緯度を用いるのが 平均中分緯度航法(Mean Middle Latitude Sailing)である。
理論的には近似計算であって、その誤差は通常の航海では実用上さしつかえない程度であるが、特に正確さを要求される場合や長い航程について計算する場合、または次のような場合は、漸長緯度航法か真中分緯度航法がよい。
出発地と到着地の緯度を中分(平均)した緯度を中分緯度として、変経(経度の差)を算出する。
<長所>
漸長緯度表のような特別の数表を用いず、三角関数表だけで計算ができ、算式も比較的簡単で、実用上の精度が得られる。また、トラバース表だけでも計算が可能である。
<短所>
・近似距離であるので、航程が大きくなりやすい。誤差の絶対量が大きくなる。
・経度を求める場合に、東西距に乗ずるsecℓはℓが大きくなると急激に変化するので、真中分緯度(起程緯度から到着緯度までの緯度のsecの平均値に対応する緯度)と、平均中分緯度(起程緯度と到着緯度の平均緯度)との差が大きくなり、経度誤差も大きくなる。
・変緯が大きい場合も、真中分緯度と平均中分緯度の差が大きくなる。
・針路が南北に近い場合には、①変緯が大きくなる。②針路誤差に対する東西距の誤差が大きくなるため、経度誤差に影響する。
・赤道を超える場合には、単純に起程地と到着地の平均緯度で東西距を経差に換算できない。
漸長緯度航法とは何か。また利点と欠点を述べよ。
「メルカトル図法(漸長緯度図法)」では経度線は緯度に関係なく平行に表示されている。因って高緯度になる程に東西方向に拡大されるので、それと同じ割合で南北方向の緯度間隔を漸次増長している(漸長緯度の意味)。また経度線が平行である為、図上で2地点間を直線で結べば常に方位(針路)が一定な「漸長緯度航路」になり、相対方位の把握に便利なので海図や地図に多用されている。
<利点>
厳密な計算に基づく計算方法で、地球を扁球として計算することもできる。また、赤道を超える場合でも適用できる。
<短所>
・計算が複雑で漸長緯度を求める場合、算出の為には公式を電卓で解くか、漸長緯度表が必要である。
・針路が約90度に近い時に誤差を生じやすい。D.long=M.D.Lat×tanCoの算式において、針路が90°に近い場合、tanCoが大きくその変化も急激になるので、M.D.Lat.や針路のわずかな誤差がD.Longに大きな誤差をもたらす。。
・高緯度においては、漸長緯度の変化が急激であるので、わずかな緯度誤差も結果としてD.Long(変経)に大きな誤差が出る。
大圏航法とは何か、利点と欠点、有効である(でない)場合を述べよ
大圏航法(Great Circle Navigation)は、地球上の2つの地点間を最短距離で結ぶ航路を計算するための方法。大圏航法は、地球の曲面を考慮し、地球上の最も効率的な航路を求めることができる。
地球は球体であるため、直線距離(直線的な距離)は短いですが、地球の曲面を考慮しない航路では、実際の距離よりも長くなることがある。大圏航法は、地球上の最も短い航路である大圏(Great Circle)を使用して、より効率的な航路を計算する。
大圏とは、地球の表面上で2つの地点を結ぶ円弧のことである。大圏は、地球の中心を通る円弧として定義され、地球上の他のどの航路よりも短い距離を提供する。
<利点>
球面上の2地点間の最短経路は大圏であり、地球を扁球とした場合の最短経路の測地線とも大差はないので、大圏上を航行することにより最短距離で目的地に到着できる。
<欠点>
両地間を結ぶ大圏上を航走すれば、最短距離を航走することになり、きわめて有効である。しかし、大圏を航行するには、絶えず針路を変える必要があり、これは事実上不可能である。従って、実際はこの大圏上に、任意の点をいくつかとり、その地点間は航程圏で航走sる。すると大圏距離より多少の増加はあるが、両地間を航程線で航走する距離より、短縮できる。
これらの変針点を多数採れば、航走距離は大圏距離に接近する反面、しばしば変針することになり、逆に変針点を少なくすれば、変針の回数が減る反面、距離は増加する。これらのことから実際には、両地間の経差を5度または10度ごとに区切った子午線と、大圏との交点をもって、変針点とするか、または1日の概略の航走距離で大圏を区切る方法をとるのが一般的である。
<有効な場合と有効でない場合>
(有効)
・航程が大きい時
・高緯度を長距離航海するほど、航程の差が大きくなる。(短くなる)
・起程地と到着地が東西に隔っているとき(経度差が大きい時)
(有効でない)
低緯度海域・短距離航海(500nm以下)・針路が南北に近い場合は、それほど有利ではない。
有効であるかないかは、メルカトル図法の航程線と比べてどれだけ差があるかに依存する。
全ての経度線(子午線)は南北両極を結ぶ「大圏」である。したがって、南北に走る場合は自然と大圏航法となり、航程線と同じ距離になる。
赤道も大圏の1つと考えれば、低緯度になるほど短縮距離が少ないことがわかる。
集成大圏航法について説明せよ。
大圏航路のみでは、その航路の頂点付近が高緯度になり、地理的制約や高緯度の荒天域を避けるために航路に制限緯度を設定し、かつ、できるだけ短い経路で航行するための航法。
クロスベアリングの手法を説明せよ
- クロスベアリングの手法:
- 物標の選定: 海図及びECDIS上で灯台や山頂などのなるべく動かない物標を選ぶ。
- 方位線の交差: 物標の方位をコンパスにて測定し、それらの方位線が交差する点が船の位置となる。
2物標以上の方位を測定し、それらの位置の線を船位とする交差方位法を行う。3物標の方位を測定した場合は、位置の線は一点で交わらず誤差三角形を形成することになる。 - 測定精度: 物標の選定や船の速度によって方位線がずれるので、適切の物標を素早く取得し、方位線を記載することが重要。
- 注意点:
- 物標の離れ具合: 2物標であれば物標同士は、90°に近いものが精度がよく。少なくとも30~150°の範囲にて物標を選定する。
3物標であれば、それぞれの交角が60°近くになるように選定する。
少なくとも30度以上がよい。 - 測定時間: 物標の測定時間を短く数秒以内にすることで、誤差を小さくできる。
- 測定の順番:方位変化の遅い物標(船首尾に近い物標)を先に、方位変化の速い物標(正横付近の物標)を後に測定する
- 物標の離れ具合: 2物標であれば物標同士は、90°に近いものが精度がよく。少なくとも30~150°の範囲にて物標を選定する。
レーダーによる測位:
2物標以上の距離を測定し、それらの位置の線の交点を船位とする。
顕著な物標がない場合や視界の状態が悪い場合でも、精度良く船位を測定することが可能。
単一物標での方位と距離だけの測定やそれぞれの物標の方位だけによるレーダー交差方位法での船位を測定することが可能。
- レーダーでの物標距離測定は、内端までの距離を測定する。
- 岬の突端や、小さな島等の選定するのがよい。
クロスベアリングに適した物標、適していない物標を挙げよ
適した物標:位置が正確で顕著な物標を選定し、なるべく近い物標を選定する。
- 灯台: 高い位置にある灯台は遠くから視認でき、方位を正確に測定できる。
- 山頂: 山頂は目立ちやすく、方位線を交差させるのに適している。
適していない物標:
- 近距離の物標: 物標同士はある程度離れている方が精度が高まる。
物標同士の近距離物標は避ける。 - 可動物標:ブイや船舶等の移動する物標は使用しない。
クロスベアリングの定誤差について述べよ。誤差はどのように示されるか、誤差を小さくするにはどうするか述べよ。
定誤差
1)コンパスの誤差が、正確に改正されていない場合。
2)コンパスの振動、またはカードは小さいなどのために、方位観測に誤差を生じた場合。
3)物標の方位観測に、時間がかかった場合。
4)位置の線を海図上に記入する際に誤差がある場合。
5)方位の読み違い、また物標の見誤りをした場合。
6)海図自体に誤差がある場合(図載位置のずれなど)
人為的誤差
3物標で測位した場合、誤差は三角形として表示される。この三角形が大きいほど誤差が大きい。
誤差を小さくするためには、
・位置が正確で顕著な物標を使用する
・近い物標を利用する
・位置の線の交角を3物標であればそれぞれの交角が60度に近くなるように選定する。2物標の場合は、90度に近いものが望ましい。
・出来る限り速やかに方位を測定する。
・方位変化の遅い物標を先に、方位変化の早い物標を後に測定する。
クロスベアリングの交角の範囲と許容範囲を述べよ
2物標であれば物標同士は、90°に近いものが精度がよく。少なくとも30~150°の範囲にて物標を選定する。
3物標であれば、それぞれの交角が60°近くになるように選定する。
少なくとも30度以上がよい。
なぜ2物標で90度がいいのか述べよ
誤差三角形のどこを船位とするか
誤差三角形が大きい場合はどうするか
基本的には再度測定する。
クロスベアリングの誤差三角形が大きい場合、以下の点に注意する。
- 物標の選択: 物標を選ぶ際に、できるだけ正確な方位を持つものを選ぶ。遠くの物標よりも近くの物標を選ぶと、誤差が少なくなる。
- 物標の離れ具合: 2物標であれば物標同士は、90°に近いものが精度がよく。少なくとも30~150°の範囲にて物標を選定する。
3物標であれば、それぞれの交角が60°近くになるように選定する。
少なくとも30度以上がよい。 - 測定時間: 物標の測定時間を短くすることで、誤差を小さくできる。
- 測定の順番:方位変化の遅い物標(船首尾に近い物標)を先に、方位変化の速い物標(正横付近の物標)を後に測定する
(解答未作成)クロスベアリングをしたときに船位が誤差三角形の外側にくる場合について述べよ
クロスベアリングで船位を測り直せない場合どうしますか
下記方法にて船位決定を行う。
- 距離と方位を組み合わせた「距離方位法」
- GPSの確認
- 天測航法の実施
- 上記が難しい場合は、他の船舶や陸上機関から位置情報を聞くことも可能である。
視界良好時のクロスベアリング、測位の要領・注意事項
・位置が正確で顕著な物標を使用する
・近い物標を利用する
・位置の線の交角を3物標であればそれぞれの交角が60度に近くなるように選定する。2物標の場合は、90度に近いものが望ましい。
・出来る限り速やかに方位を測定する。
・方位変化の遅い物標を先に、方位変化の早い物標を後に測定する。
視界制限時のレーダーでの船位決定、要領・注意事項、方位と距離どちらが精度がいいか。
・物標までの距離はその物標の内側端までの距離を測定する。
・物標はなるべく前面の傾斜角が大きな岬か、小さな島がいい。
・物標はなるべく近距離のものを測定する。
・距離の方が精度がよい。方位は水平ビーム幅の影響で誤差が距離より大きい。
ランニングフィックス(Running fix)を説明せよ
2本以上の位置の線が得られない状況の場合は、1本の位置の線を転移し船位を求める方法、これを両側方位法(ランニングフィックス)という。
物標の方位で位置の線1を測定した後、しばらく航走する。その後もう一度同じ物標にて位置の線2を取得。そして、位置の線1を針路及び航走距離分転移し位置の線3とする。その交点Fを船位とする方法。
ランニングフィックスで求めた船位は、位置の線の転移誤差が含まれていることを考しなければならない。
ランニングフィックスの特殊な場合として、船首倍角法は次の問題で説明する。
船首倍角法を図で説明せよ
ランニングフィックスの特殊な場合として、Aの位置での1回目の方位を船首方向から角度45°とし、Bの位置での2回目の測定でその2倍の90度となるように測定し船位を決定することを船首倍角法という。
船位決定で物標1個だけを使用する場合どのような方法があるか
物標が一つの場合、船位を決定する方法として「ランニングフィックス」がある。
■水路図誌/海図
海図はどこで発行されているか
海図は海上保安庁海洋情報部によって発行されている。
以下、参考までに海外での状況
- オーストラリア: オーストラリア海軍が刊行
- イギリス: 英国海洋情報部(UKHO)が刊行
- フランス: フランス領海域を含めてフランスが刊行
- アメリカ: 米国海洋大気庁(NOAA)がアメリカの海図を刊行
- カナダ: カナダ沿岸警備隊がカナダの海図を刊行
海図でのNCは、なんの略か
海図での「NC」は「ノーチェック」の略で、特定の情報が確認されていないことを示す記号として使用されている。
海図改補方法について
・紙海図
基本的に紙海図は、新版が発行されるまで時間がかかる。そのため、水路通報(海上保安庁海洋通報部HP及び印刷物)に基づいて、都度海図内の記載情報に変更があれば訂正を行い、航海の安全のため最新にする必要がある。
新しい海図の購入時は、海図の裏側に「第〇号まで改補済」と海上保安庁及び販売所によって裏印が押されているので確認し、発行から使用時までの期間の水路通報にて改補する。
海図の改補は、小改正と一時的な改補の二種類がある。
- 小改正
改正内容が永続的なものに関しては小改正を行う。
改補は、日本版海図は赤色インクでBA版海図(英国水路部が発行)はViolet(紫色)インクの手記で行うか水路通報による補正図を海図に貼ることで改補する。
また、海図の改補を簡単に済ませる方として、半透明の薄い紙を海図に照らし合わせて複写するだけの「海図改補用トレース紙」を使用することも可能。
小改正を行った海図は、小改正の項数を海図欄外左下に記載する。多数の小改正を行った場合は最新の項数のみを記載することで事足りる。 - 一時的な改補
名前の通り、改正が一時的なものや復旧予定や変更予定改補は一時的改補を実施する。一時的な期間としては有効期間が約1年以内の情報。
鉛筆で記載し、改正事項が無くなったり期限が切れれば消せるような状態とする。
・電子海図
電子海図のアップデート方法として、近年外航船で採用されているNAVTOR社を採用した場合の方法を挙げる。
NAVTOR社と契約し、下図NAVBOXを入手。ブリッジネットワークにハードウェアとして取り込む。LANケーブルにてECDISとも接続。
このNAVBOXにて、チャートアップデート及びADP、AENP、航行警報、気象データ、電子書籍等のデータを取得可能可能となる。
*会社の規則により、ECDISをネットワークに直接繋げるのはサイバーセキュリティ―の観点から良くないとしている会社もある。
ECDISが直接NAVBOXに接続されている場合、改補データを直でNAVBOXから抽出できるが、接続されてない場合はデータが入っているNAVSTICKというUSBをECDISに接続しアップデートを行う。
以下、毎週行う(WEEKLY UPDATE)手順。
- ECDISでチャートメンテナンスモードに入り、ENCのチャートパーミットを入手しECDISに取り込む。
- チャート(海図)データをECDISに取り込む。
この時パーミット外のエリアのチャートを読み込んでも使用は出来ない。 - チャート読み込み後、AIOデータをECDISでアップデートする。
アップデート後、下図アップデートレポート及びチャートエリアを印刷しファイルする。
ECDISでもアップデートログを確認できるが、検船等で確認されることもあるのでファイリングし直ちに提出できるようしておくのがよい。
新しいチャートをオーダーする際は、インターネットに繋がっているPCにてNAVTrackerというシステムでオーダーをするが、説明は割愛する。
用語説明
ADP:ADMIRALTY Digital Publicationsの略で航海刊行物の総称。
ATT(ADMIRALTY Total Tide: 潮汐表)、ADLL (ADMIRALTY Light List: 灯台表)、ADRS (ADMIRALTY Digital Radio Signals: 通信やReporting関係の情報をまとめたもの)で構成されている。
AENP:ADMIRALTY e-Nautical Publicationsの略で「Sailing Direction」に加え、天測暦、船長や航海士が必要な知識をまとめた「Mariner’s Handbook」、電子海図に関する情報をまとめた「Guide to the Practical Use of ENCs」等、航海に必要な情報が総合的に収録されている。
AVCS:The ADMIRALTY Vector Chart Serviceの略称。世界をリードする公式の電子海図で、15800以上の公式電子海図(ENC)によって構成されている。このサービスにより旗国と寄港国の要件を満たし、安全な航海を実現している。
ENC:Electronic Navigational Chart(航海用電子海図)政府公認の、電子化された海図データ。
AIO:ADMIRALTY Information Overlayは、紙海図のT&P (Temporary or Preliminary :一時的な改補)情報のうち、ENC(Electric Navigation Charts)のアップデートには含まれない情報を重畳するデータ。
基本的にはT&P情報はECDISのENCの更新により毎週の更新で情報がアップデートされるようになっているが、国によっては供給されていない場合があり、自身で各国のAIO情報マニュアルで更新しないといけない。以下T&P情報の各国の供給状態のリストとなる。
ENC-TandP-NM-Status.pdf (admiralty.co.uk)
海図の補正図とは何か
海図の補正図は海図の一部を訂正するためにしようされる小さな図である。
船が接岸する場所や通行するための部分など、船舶の大きさを考慮した目的に応じて情報が載っているものを、海図を最新な状態にアップデートするために貼り付けられる。
改補したらその履歴を残すため、海図に日付を記載するが、いつの日にちを記載するか
海図の改補日付は、改補作業を実施した日を記載する。
航行警報について説明せよ
航行警報(Navigational Warning)は、海上保安庁が船舶交通の安全を確保するための緊急情報である。具体的な情報内容としては、灯台の消灯、ブイの漂流情報、軍事演習場所と期間、海賊情報、遭難情報等、船舶航行に影響を与える可能性がある情報が含まれる。情報は、無線やインターネットを通じて周知している。
航行警報は、以下のような手段で提供されます:
- NAVTEXシステム: 日本沿岸から約300海里以内を航行する船舶に対して、緊急情報を英語と日本語で放送します。
- インターネット:同じ情報をオンラインでも提供している。
レーコンとは何か
レーダービーコン(Radar beacon)の略。
レーダーのパルス電波を受信し、特定のモールス符号を使い信号を四方に放射し返す装置。
例えば暗礁ならDangerの“D”符号を付与したレーコンをブイに搭載して、標識灯とともに、レーダーにも映るようにする。
レーダーの表示画面上には、ブイを設置した後方に“D“の、モールス符号“― ― -”の表示がなされ、この符号が描かれる最初の地点の近傍に暗礁があることを、自動的に周知することが可能。
レーダービーコンとは何か
レーダービーコン(Radar Beacon)とは、船舶のレーダーから発射された電波を受信し、それに応じて電波(マイクロ波)を発射する装置。
この応答信号で船舶のレーダー画面上にビーコンの位置が表示される。
視界が悪い状況や夜間において、船舶が自船の位置や周囲の障害物を正確に把握するために使用される。
水路書誌の種類を挙げ説明せよ
水路書誌にはいくつかの種類があり、それぞれ異なる情報を提供する。
以下に主な種類とその説明を挙げる。:
- 水路誌:
- 航路、港湾、目標、気象、海象などを文章、図表、写真などで詳しく記述したものです。例えば、「本州南・東岸水路誌」や「瀬戸内海水路誌」などがある。
- 灯台表:
- 灯台や灯標の位置、特徴、灯光の特性などを記載したものである。航海中の位置確認や航路の安全確保に役立つ。
- 潮汐表:
- 潮の干満の時刻や高さを予測した表。港湾や航路の計画に重要な情報を提供する。
- 距離表:
- 各港間の距離を記載した表。航海計画や燃料消費の計算に利用される。
- 水路図誌目録:
- 水路図誌全般にわたる目録で、利用可能な水路図誌の一覧を提供する。
水路図誌目録には何が記載されているか
現在刊行されているすべての水路図誌(海図、水路書誌)・航空図の番号・名称・刊行年月などが記載されている。
水路通報について説明せよ
水路通報(Notices to Mariners)は、船舶の航行安全を確保するために必要な最新情報を提供するものである。
具体的に下記のもの。
- 海図の更新情報:海図を最新の状態に保つための小改正情報。
- 航路標識の変更:灯台やブイなどの航路標識の位置や特徴の変更。
- 海上工事・作業情報:海上で行われる工事や作業の情報。
- 訓練情報:自衛隊や米軍などが実施する射爆撃訓練の情報。
- 環境保全情報:環境保全に影響を与える可能性のある情報。
海図の水深はどこを基準にした値か
水深の基準は、最大干潮時の水面である最低水面を基準としている。
海図に記載されている水深は、潮が引いてもその水深より浅くなることはほぼない。
橋の高さはどこを水準にするか
橋の高さは、「平均水面」を基準にして測定される。
これは、潮の満ち引きを長期間観測して得られた平均的な水面の高さで、平均水面を基準にすることで、橋の下を通過する船舶の安全性を確保することができる。
標準港以外での潮汐の求め方を説明せよ
- 標準港のデータを取得:
- まず、近くの標準港の潮汐データを入手。これは海上保安庁が発行する潮汐表などで確認可能。
- 潮時差の計算:
- 任意の港と標準港の間の潮時差を計算する。これは、標準港の満潮・干潮の時刻に対して、任意の港での満潮・干潮の時刻がどれだけずれているかを示す。
- 潮高比の計算:
- 任意の港と標準港の間の潮高比を計算する。これは、標準港の潮位に対して、任意の港での潮位がどれだけ異なるかを示す。
- 任意港の潮位の計算:
- 標準港の潮位データに潮時差と潮高比を適用して、任意の港の潮位を求める。
具体的には、以下のような式を使用する:
任意港の潮位=(標準港の潮位−標準港の平均水面の高さ)×潮高比+任意港の平均水面の高さ
この方法を用いることで、標準港以外の任意の地点での潮汐を推定することができる。
潮汐表はどのような事にどのように使うか
・安全な航海計画
潮汐表を使って、満潮や干潮の時刻を確認し、航行ルートを計画する。
特に浅瀬や港湾では、潮の満ち引きによって水深が変わるため、船が座礁しないように確認する。
・出入港
出入港は、潮汐表を参考にして最適なタイミングを選択する。
満潮時には水深が深くなるため、大型船が安全に入港・出港できるようになる。
・荷役作業
貨物の積み下ろし作業を行う際にも、潮汐表を使って最適なタイミングを計画する。
例えば、自動車船やRORO船でのランプ使用可否を判断するのに使用する。
・潮流予測
潮汐表を使って潮流の強さや方向を予測し、航行中の燃料消費を最適化する。潮流に逆らわずに航行することで、燃料の節約が可能。
・緊急時対応
緊急時には、潮汐表を使って最適な避難ルートや避難場所を選定できる。
例えば、高潮や津波の際には、潮汐表を参考にして安全な場所に避難することができる。
導灯と導標の違いについて述べよ
導灯
- 役割: 導灯は、船が安全に航行できるように、特定の航路を示すために使用されます。特に狭い港や湾の入口などで、船が真っ直ぐ進むべき方向を示します。
- 設置場所:通常、陸上に設置され、低い塔と高い塔の2つの構造物が1組になっている。船から見ると、この2つの塔が一直線に並ぶように見える位置を航行することで安全な航路を航行することができる。
導標
- 役割: 導標は、通航が困難な水道や狭い湾口などの航路を示すために使用されます。昼間に有効な標識で、航路の延長線上に設置されることが多いです。
- 設置場所:通常、陸上や水上に設置され、前後に複数の標識が並んでいる。これにより、船は標識を目印にして航行することが出来る。夜間には点灯装置を備えた導灯として機能することもある。
立標と灯標の違いについて述べよ
立標は、灯光を発しない航路標識である。主に障害物や航路の位置を示すために設置される。夜間は光を発さないので、昼間にしか使用できない。
一方、灯標は、灯光を発する航路標識である。同じく障害物や航路の位置を示すために設置されますが、夜間には灯光を発するため、夜間でも視認することが可能。
簡単に言うと、立標は光を発しない標識で、灯標は光を発する標識という違いがある。
灯台表及び灯台追加表は何年に一回の発刊か
灯台表は通常、毎年発刊される。
一方、灯台追加表はより頻繁に発行され、最新の情報を提供するために毎月発行される。
灯質 Al WR 10s とはどのような灯火か
上記は、灯質を問う問題で最も出題される。下記ページを参照し、概要を把握頂きたい。
(財)航路標識の灯質、日本財団図書館
日本財団図書館(電子図書館) プレジャーボート・小型船用港湾案内 ?本州北西岸? (zaidan.info)
https://nippon.zaidan.info/seikabutsu/1998/00370/contents/007.htm
各浮標識のトップマークと灯質,塗色を述べよ
方位標識の概要については、どの種類も満遍なく出題される傾向にある。下記を参照し、全て解答できるように準備頂きたい。
方位標識
第4管区海上保安本部, 浮標式:方位標識
浮標式:方位標識|第四管区海上保安本部 (mlit.go.jp)
孤立障害方式
第4管区海上保安本部, 浮標式 : 孤立障害標識
浮標式:孤立障害標識|第四管区海上保安本部 (mlit.go.jp)
安全水域標識
第4管区海上保安本部, 浮標式 : 安全水域標識
浮標式:安全水域標識|第四管区海上保安本部 (mlit.go.jp)
特殊標識
第4管区海上保安本部, 浮標式 : 特殊標識
浮標式:特殊標識|第四管区海上保安本部 (mlit.go.jp)
電波標識の海図図式とそれぞれの特徴
・マイクロ波無線標識(レーマークビーコンやレーダービーコン)
電波の灯台から出している電波を船のレーダーで受けると、船のレーダーの画面上に、船と送信局とを結ぶ延長線上に点線が現れる。レーダービーコンの符号は、PPI上にレーダービーコン局のすぐ後方(中心から見て外側)に輝線で表示される。
・AIS航路標識
リアルAIS航路標識
実在する航路標識から当該標識の位置を示すAIS信号を送信する装置。これは、航行安全のために設置された実在する灯台やブイなどの航路標識から発信される信号で、周囲の船舶に自身の位置情報を提供する。
・シンセ(合成)AIS航路標識
遠隔地から実在する航路標識の位置を示すAIS信号を送信する装置。これは、実際の航路標識の位置情報を基に、遠隔地から合成的にAIS信号を送信することで、船舶に対して航路標識の存在や位置を通知する。
・バーチャルAIS航路標識
遠隔地から実在しない航路標識の位置を示すAIS信号を送信する装置。これは、航路上に実在しないが船舶にとって重要なポイントや危険を示すために、遠隔地から送信される架空の航路標識であり、船舶の航行を支援する。
海図図式を説明せよ(図式一覧)
水源について説明せよ
海の上で標識を見る時の右・左側の基準
標識の示す、左・右舷の基準、それが「水源」である。
もし、基準となる「水源」を決めないと、左右は、船舶の進行方向によって異なってしまため、その海域の水源を基準とし船舶の進行方向を決めている。
各港の水源を挙げよ
- 日本沿岸における水源:与那国島
- 瀬戸内海(関門海峡を含む、宇高航路を除く):神戸港
- 宇高航路:宇野港
- 八千代海:三角港
- 港湾・河川の水源:港湾・河川及びこれに接続する水源は港・湾・河川の上流部
音響信号付きの特大係船浮漂の役割を挙げよ
音響信号付きの特大係船浮漂(ブイ)は、海上での安全性と効率性を高めるために重要な役割を果たします。以下にその主な役割を挙げます:
- 船舶の係留:大型船舶が安全に停泊できるようにするための固定点として機能します。
- 航路標識:音響信号を発することで、視界が悪い状況や夜間でも船舶に位置情報を提供し、航行の安全を確保します。
- 障害物の警告:海中の障害物や浅瀬の位置を知らせることで、船舶の衝突を防ぎます。
- 環境モニタリング:一部の浮漂は環境センサーを搭載しており、水質や気象データを収集する役割も果たします。
これらの機能により、音響信号付きの特大係船浮漂は海上交通の安全性を大幅に向上させる重要な装置となっています。
海図と灯台表の光達距離にはどんなものがあるか、海図と灯台表にはどの距離が記載されているか
① 光学的光達距離
最も条件が良いとき(例えば月明かりや霞が無く波が穏やかな快晴の夜)などに灯台の光が到達可能とされる距離である。
指定を約18nm(大気の透過率=0.85)
*実効光度を2×10-7ルクスとする。
② 名目的光達距離
*光源光度、視程、実効光度から算出される。
視程を10海里(透過率0.74)
実効光度は2×10-7ルクスとしている。
晴天の暗夜に灯台の光がおよそ実用的に目視できる距離である。
上記の②を国際基準に合わせる為に、平成14年4月1日以降は、光源をリズム光(点滅する)として計算したものを使用しており、これを「②’実効光度を用いた名目的光達距離」と呼んでいる。
③ 地理的光達距離
灯高(H)及び眼高さ(h)から算出する地理的光達距離Dは、
D=2.083×(√H+√h)mで求めることが出来る。
灯台表や海図には、眼高を平均水面上5メートルとして計算した数値を使用している。
*光源光度は光源そのものの明るさを表し、特定の方向における光の強さを示す。
実効光度は光源が放射する全ての方向における光の合計量を表し、実際に人が感じる光の明るさを示す。
海図と灯台表にはどの距離が使用されているか?
海上保安庁が発行する海図と灯台表には、②’実効光度を用いた名目的光達距離と③ 地理的光達距離のどちらか小さい方が記載されている。
一方で、IALA(国際航路標識協会)は②’実効光度を用いた名目的光達距離を使用することを明示しており、他の種類の距離の使用は推奨していない。
解答としては、日本(海上保安庁)発行のものでは②`と③の小さい方であるが、国際的には②’が記載されている、こととなる
■航海計画
明石海峡航路の航行方法、行先信号、速力について述べよ
航行方法
- 航路の遵守:長さ50メートル以上の船舶は、航路に沿って航行。
- 避航義務:航路を横断する船舶は、航路を航行している他の船舶の進路を避けなければならない。
- 速力制限:明石海峡航路では、船舶は12ノットを超える速力で航行してはいけない。
- 錨泊の禁止:航路内での錨泊は禁止されている。
東での経路概要
① 明石海峡航路をこれに沿って西の方向に航行する長さ50メートル以上の船舶は、
・A線の北側の海域を航行すること
・B線を横切って航行すること
② 明石海峡航路をこれに沿って東の方向に航行した長さ50メートル以上の船舶は、
・A線の南側の海域を航行すること
・明石海峡航路東方灯浮標の設置されている地点からから200メートル以上
離れた海域を航行すること
西での経路概要
① 明石海峡航路をこれに沿って西の方向に航行した総トン数5,000トン以上
の船舶は、A線の北側の海域を航行すること
② 明石海峡航路をこれに沿って東の方向へ航行する総トン数5,000トン以上
の船舶は、A線の南側の海域を航行すること
信号による進路の表示
総トン数100トン以上の船舶は、航路外から航路に入り、航路から航路外に出ようとするとき等において、昼間は国際信号旗を表示することにより、夜間は汽笛を吹鳴することにより、進路を他の船舶に知らせなければなりません。
日潮不等とは何か
日潮不等(Diurnal inequality)は、潮汐において、午前と午後の満潮あるいは干潮の水位や時間間隔に差があることを指す。2つの満潮又は干潮の差を日潮不等と呼ぶ。
原因
この現象は地球の自転軸と月の位置関係によって生じる。
月が地球の赤道面上にいる場合は分点潮(Equinoctial tide)となり、日潮不等は小さくなる。一方、月が北側にいる場合は回帰潮(Tropic tide)となり、日潮不等は大きくなる。季節によっても日潮不等の大きさが変化し、春秋分や夏至・冬至においても影響を受ける。
分点潮 (Equinoctial tide):月が地球の赤道面上にある時(図①参照)
観測者のいる場所は、月の側でも逆側でも同じくらい伸ばされることとなる。どちらの満潮も同じくらいになり、日潮不等は小さくなる。
回帰潮 (Tropic tide):月が赤道上より北側にある時(図②参照)
観測者のいる場所が、月の方にいる時は大きく伸ばされる。しかし逆側ではそれほど伸ばされないことが分かる。
よって前者では満潮は大きくなり、後者では満潮でもあまり潮は変化せず日潮不等が大きいということになる。
下げ・上げ潮流とは何か
下げ潮は、満潮から干潮までの間で海面が下降しつつある状態を指す。
上げ潮は、海面が上昇しつつある状態で、干潮から満潮までの間を指す。
上げ潮中に流速が最も速くなる方向の潮の流れを上げ潮流と呼び。
下げ潮中に流速が最も速くなる方向の潮の流れを下げ潮流と呼ぶ。
上げ及び下げ潮の時間帯は日々変化し、月や太陽の位置によって決定する。
潮の満ち引きは基本的に一日2回起こり、約6時間ごとに上げ潮から下げ潮またはその逆に切り替わる。
沿岸航行時何に基づいて離岸距離を決定するか
月潮間隔を説明せよ
月潮間隔(または高潮間隔)は、月の正中時と満潮(高潮)時間とのずれを指す。
例えば、ある日の月の正中時が午後2:20で、その直後の満潮(高潮)時が午後6:00であれば、月潮間隔は「午後6:00」から「午後2:20」の間隔、つまり3時間40分となる。
潮汐の小潮大潮を図示せよ
用語説明
太陰潮:潮の満ち干のうち、月の引力によって生じる部分。太陽潮より大きい。
太陽潮:潮の満ち干のうち、太陽の引力によって生じる部分。
船舶通航信号所とは何か
船舶通航信号所は船舶交通の輻輳海域や港湾で航行安全に必要な船舶通航情報を電光掲示板などで提供する施設。
例として、門司船舶通航信号所(関門海峡海上交通センター)、牧山船舶通航信号所(若松港内管制室)、本牧信号所(本牧船舶通航信号所)、大黒信号所(本牧船舶通航信号所)、内港信号所(本牧船舶通航信号所)等がある。
大洋航海の航海計画⽴案について、考慮する事項を述べよ
<航路選定>
・水路図誌その他資料による事前の調査
・航海実施上の安全を第一に考え、最短距離の航行による燃料の節約、所用日時の短縮などの経済的要件の考慮
・季節と海域によりことなる外力の利用と影響
・船位確認のために、航路の途中の有効目標はあんぜんを見積もった航過距離で、多少航程の損失があっても必ず確認できるようにする
・狭水道の通航、港湾の出入港、主要地点の航過時機
・海図の制度、(特に水深と地形)と関連し、浅水箇所、水深不均等の空白地、礁脈、孤立岩礁、沈船などは避ける。
・常用航路、推薦航路の利用
<沿岸航行時>
・陸岸離隔距離、主要目標航過距離の決定
・陸岸並行航路における向岸流、向岸強風に対する警戒
・変針点の決定 : 顕著な島や灯台。航路標識を用いる。
・変針目標の設定 : 新針路方向に、これと並行または並行に近く近距離で明瞭な目標を選定する。船主尾目標やトランジット(重視線)の利用が望ましい
・変針角度に対する考慮 : 大角度変針は避ける
・避検線(NGA)の選定 : 航路上の危険物に対しては、簡単でかつ明瞭な避検線を設定する。
河川航海の航海計画⽴案について、考慮する事項を述べよ。海水比重の変化による喫⽔変化量について述べよ。
<水深>
・海水と淡水の比重差により、喫水が増加する。
・雨や増水により河川の水深・低質は変化しやすいので、海図記載の水深をそのまま信頼することは避ける。
・浅水影響による船体沈下に注意する。
・蛇行した河川では、一般に大回りした方が水深が深い場合が多い。
<航路標識>
・背後の街並みによって、灯火が視認しにくい場合がある。
・最新の海図に改補がされている、変更点が多い
・特定の信号が多いので、注意が必要。流速が早い為に浮標の位置が移動している場合がある。
<河川にかかっている橋>
・最高高潮面上の高さが海図に記載されているので、通過時の潮高と本船の水面上の高さを考慮して、通過の可否を判断する。
・橋脚部分の水流は複雑に変化しているので、十分離れる。
・レーダーにおいれ、橋による偽像の発生により、橋の背後の物標の識別が困難になる場合がある。
世界の海流について
航海計画を述べる問題では、しばしば海流について問われることが多い。下記の図を参照、できれば白紙から描けるようにし、解答できるよう準備頂きたい。赤線は暖流、青線は寒流を示す。
暖流:赤道(低緯度)から北極or南極側(高緯度)に向かって流れる
寒流:北極or南極側(高緯度)から赤道(低緯度)に向かって流れる
北米西岸(サンフランシスコ等) ~横浜の航海計画
<一般>
・大圏航路が最短距離、かつ黒潮、北太平洋海流およびアリューシャン海流の順流が期待できるが、特に冬季では高緯度域で低気圧が発達しやすく、集成大圏航法を採用するのがベターである。
・集成大圏航法の制限緯度は、天気予報によって異なるが、30N~35Nに設定することが多い。
<風>
冬季の場合、40Nより北では低気圧が頻繁に発生し、中国/日本付近から、アリューシャン列島およびアラスカ南部に向かって通過しているため、荒天に対する注意が必要。低気圧が広がる海域では、風力7、波高6m以上になることも多い。
<海流>
・北米西岸に達した北太平洋海流の一部は北上し、アラスカ海流となる。さらにその一部はベーリング海へと入る。
・40N以南を北米西岸に沿って南下する弱い寒流を、カリフォルニア海流という。季節風によって2月中旬~7月にかけて沿岸に湧昇流(季節風、貿易風などの風、地形変化、潮流等が要因で、海洋深層水が表層近くへ湧き上る現象)が発生し水温が低い。カリフォルニア海流は、南下すると北赤道海流に連なる。
南シナ海の航海計画
(出題例 シンガポール~Luzon straitまでの航海計画、夏と冬で航路を変えるか、どのような風が吹くか、海流は、南シナ海の方へ台風はくるか)
<台風>
南シナ海は熱帯低気圧や台風の発生エリアの一つで、特に多いのは5月から11月までの間で、ピークは7月から10月である。南シナ海で台風が生成される主な理由は、この地域が赤道に近く、海水温が高いために熱帯低気圧が発生しやすい環境にあるからである。また、一年の大半が雨季であることも、熱帯低気圧が台風に発展する条件を整えている。
<季節風>
冬季(おおむね11月から4月):アジア大陸は寒冷であり、その対比として赤道付近は暖かい。この温度差により、陸地から海へ向かう北東風(モンスーン)が吹く。これが「冬季モンスーン」または「乾季モンスーン」と呼ばれるもので、乾燥した気候をもたらします。海上で平均風威力4~5。
夏季(おおむね5月から10月):この時期、アジア大陸は暖かくなり、海洋よりも温度が高くなり、海から陸へ向かう南西風(モンスーン)が吹きます。これが「夏季モンスーン」または「雨季モンスーン」と呼ばれ、湿気を含んだ気候をもたらし、この時期は多雨となります。海上で平均風力3~4。
南シナ海の季節風は、一年を通じてその方向が変わる特徴があります。そのため、この地域の気候や天候は季節風に大きく影響を受けます。
<海流>
季節風に支配されている。夏季の南西季節風期には一般に大陸の沿岸に沿って北東に流れ、冬季の北東季節風期には大陸の沿岸に沿って南西に流れる。流速は夏季・冬季ともに0.5~1.5ノットであるが、季節風の強さに左右される。
<南シナ海における黒潮>
ルソン島沖を北方へ向かい、台湾と与那国島との間から東シナ海に流入し、大陸棚外縁に沿って北上し、日本の南方海域へ抜ける。2.0-5.0kn
海上保安庁 海洋情報部 : 海洋速報&海流推測図
https://www1.kaiho.mlit.go.jp/KANKYO/KAIYO/qboc/2024cal/cu0/qboc2024058cu0.html
2 月中頃のサンフランシスコ→横浜間 ベーリング海経由の航海計画を立てよ
a) ベーリング海経由の航海計画となる場合、どのような理由があるか
大圏航路に近いため航程が短くなる。
ベーリング海は通常、低気圧が南側を通る事が多く、西航の場合は追い風が期待できる。
西航の場合に逆潮となる、北太平洋海流やアリューシャン海流を避けることができる。
春・夏・初秋には霧が多いが、北側は比較的状況がよい。
b) ベーリング海の入り口と出口はどことするか(アリューシャン諸島のどこの島を抜けるか)
c) 当該航海計画の注意点
ベーリング海に入るまでは、アラスカ海流の順流、ベーリング海を抜けた後は、親潮による順流が期待できる。また、低温海域の着氷に注意が必要。
太平洋の潮流に関して(内地からシドニー向けの航路において順番に影響を受ける潮流について)
航海計画を述べる問題では、しばしば海流について問われることが多い。下記の図を参照、できれば白紙から描けるようにし、解答できるよう準備頂きたい。赤線は暖流、青線は寒流を示す。
暖流:赤道(低緯度)から北極or南極側(高緯度)に向かって流れる
寒流:北極or南極側(高緯度)から赤道(低緯度)に向かって流れる
大西洋の潮流に関して
航海計画を述べる問題では、しばしば海流について問われることが多い。下記の図を参照、できれば白紙から描けるようにし、解答できるよう準備頂きたい。赤線は暖流、青線は寒流を示す。
暖流:赤道(低緯度)から北極or南極側(高緯度)に向かって流れる
寒流:北極or南極側(高緯度)から赤道(低緯度)に向かって流れる
航海計画をたてる際に使用する書誌を述べよ。
・(Admiralty Total Tide)
・(Admiralty Digital Radio Signals) – 通報関連
・(Admiralty Digital List of Lights) – 灯台表
・(ROUTING CHARTS) – 航路誌、主要港間の航路と距離、海流、氷限、満載喫水線、風配図のほか、各月の気象・海象予想などが掲載され ています。
・(SAILING DIRECTIONS (PILOT BOOKS )) – 水路誌、入港や沿岸航行に役立つ基本的な情報が掲載されています。すべての船種が使用でき、世界の大半の水域がカバーされています
・(THE MARINER’S HANDBOOK (NP100))– ブリッジでの手順、海図の使用、航海の制限事項など、航海計画の作成に役立つ重要な情報が掲載されています。
・(LOAD LINE CHART) – 当該航海の通航帯域と、本船が積載可能な最大喫水を確認するための図です。
・(SHIPS’ ROUTING ) – IMOにおいて採択された分離通航方式、対面航路、深水深航路、推薦航路、警戒水域、避航水域に関する情報が掲載されています。
・(TIDAL STREAM ATLAS) – 潮流の流向、流速が掲載されています。
・(GUIDE TO PORT ENTRY) – 世界約1万5,000港の詳細な港湾情報をまとめたガイドです。入港前情報、港湾局から要求される書類の内訳、入港可能な最大船型、荷役能力など、安全な寄港を計画するために欠かせない情報が掲載されています。
・(MARITIME SECURITY CHARTS) – 重要な安全・保安情報が掲載されている海図です。海賊やテロなど、保安上の危険に遭遇するおそれのあるハイリスク海域を航行する航海計画を立て、それを実行する際は、この海図を参照し、可能な限りその内容に従うようにしてください。
・e-NP
・Notice to Mariners
はじめて入港する港は、どのようなことを確認・注意し、事前調査するか。
(1)港湾事情
水路誌および港湾図等により、次の事項を調査する。
・港湾の地形、水深、測量精度、底質
・風向/風速/視程など
・潮汐/潮流
・バースの位置、係船能力
・荷役設備
・航路管制、信号、特別なルール
・船舶の輻輳度
・食料/燃料/船用品/水の補給の可否
(2)港へのアプローチ
・パイロットステーションの位置を把握し、船舶の輻輳具合を考慮した上で、ブリッジチームの構成(見張り員の増員や船長コールポイント)を計画する。
・なるべく大変針は避けるようにし、顕著な物標による位置の把握がしやすい航路を引く。
・Contingency Anchorage(緊急時などの投錨するエリア)を定めておく
・船体コンディションから、Min UKC(ECDISならばSafety Depth)を計算し、避検線を引く
避険線について知るところを述べよ。
<要件>
・海図に記載された位置が確かで、視認が容易なもの
・測定すべき点が容易なもの
・測定方法が容易なもの
<効果>
・危険海面、制限水域の航行また、他船を避航する場合など、不安なく、避検線の限界まで避航することができる。
・狭水道航行など変針が多く、船位を測定する余裕がない場合、避検線によって危険物に対して安全が確保できる。
<注意事項>
・自船の航行状態や船位測定の精度を考慮して、余裕をもって航行する。
・危険水域付近では、なるべく視認が容易で、位置が確実な物標を選定する。
・避検目標と危険水域を結ぶ線が、航路と並行に近い場合は方位線を、航路と直角に近い場合は距離の圏を用いる。
・予備の線も用意しておく。
・自船の針路、速力、喫水、操縦性能や風圧および流圧の影響等の自然条件を考慮する。
・海図の測量精度や船位測定の難しさを考慮する。
・他船を避航する為の余裕水域を考慮する。
・前後左右の変位がただちに判断できる避検目標を選定する。
<種類>
・二物標の重視線
・物標の方位線
・物標の正横距離線
・物標からの等距離線
・等深線
練習用海図を渡されて「土曜日のお昼頃,海上は平穏で視界良好とします。AからBまで航海する場合、あなたならどのような航海計画(コースライン,変針点等)を建てますか。その場合の注意点を述べよ。
顕著な灯台を船首目標,変針目標に設定,避険線の設定,浅瀬,漁港,漁船,プレジャーボートなどを考慮して作成する。
また、土曜の昼は遊漁船とプレジャーボートが多く出てくることが予想されることも考慮に入れる。
狭水道航行(入港時)に際しての注意事項を述べよ
<航路>
・可航水域のできるだけ中央に航路を引く。水路誌や海図に航路の記載があれば、それに従うのがよいが、反航船の存在を考慮し、航路の中央より右を航行した方が良い場合もあることも留意する。
・大角度変針はできるだけ避ける。
・漁船が多い海域を調査し、可能な限り避ける。
・水道や航路の入り口付近での大角度変針は避け、遠距離からアプローチできるようにする。
・わん曲部では、大角度変針は避ける。複数回の変針で曲がり切れるように航路を引き、船首目標となる重視線や顕著な物標を選定しておく。
<ユーザーチャート・避検船>
・船首目標はできるだけ顕著なものを選ぶ。重視線がとれるものがあればなお良い。
・避検船は分かりやすいものを記載し、本船のMinimum UKCを計算し、その結果得た安全水深(Safety Depth)の等深線を海図上に示す。
・レーダー距離による顕著な物標からの等距離線と方位を記載しておけば、船位の把握に役立つ。
・側壁影響の発生を考慮し、速力を減じて走る箇所を記載しておく。
浅水海域航行時に於ける注意事項。
・水深と喫水、UKCの関係を考慮し、低潮時~高潮時のどの範囲で航行可能か調査する。本船のコンディションによっては、高潮時にしか航行できない水域があることに留意する。
・トリムはできるだけイーブンキールにする。これは、エコーサウンダーが船首底部のみにしか取り付けられていない場合などで、船首と船尾での喫水差による測定の不安要素をできるだけ排除するためである。
・浅水影響及びバンクエフェクトを考慮し、低速かつ操縦性能を失わない速度で航行する。
・水深の測量精度(ECIDSであればCATAZOC)によっては、海図記載の水深に誤差の範囲があることに注意する。
・コンティエージェンシーアンカレッジ(緊急時に投錨する水域)を定めておく。
推薦航路使用時の利点と注意事項。
<推薦航路とは>
・推薦航路とは、SOLAS条約に基づき、国際海事機関が指定する航路のひとつ。
・海図に、航路の中心線及び航行方向が表示されるほか、航路の西端位置、東端位置及び適用
・海域の範囲を示す位置に、バーチャルAIS航路標識(V-AIS)のシンボルマークが表示されます
<利点>
・地形・海潮流その他自然的条件のみを考慮の上、航海の安全のために水路図誌の発行者が推薦した航路であり、第三者機関(本船乗組員以外の者)による検証がされていること。
<注意事項>
・航路は他船との行会い、横切りなど交通的条件を考慮していないことがあること。
・航路線は航路及び水道の中央と必ずしも一致しないことがある。
・推薦航路はある程度の可航幅をもっているが、それを省略して、1本の標準的な航路線で代表してある。
台風が近づいた場合どのような港に避難するのがいいか
以下大型船が避難するのに考慮する事項。
- アンカーするのであれば錨が下せる程度の水深及び錨掻きがいい底質の港:一般的に砂・泥質などがよい。
- 防波堤の有無:防波堤がある港は、波浪や暴風から船舶を守るのに役立つ。
- 港の広さ:大型船舶が安全に停泊できる広さが必要。他船舶の混雑状況や他船舶と距離がとれる場所。
- 島影や湾内:暴風の風向やうねりが島影や湾内で弱まるような場所。
小型船は台風が近づいた際に船舶が避難するためには、避難港が最適である。
避難港は、荒天の際に安全に停泊できるように設計され、日本には36の避難港が指定されている。これらの港は外洋からの波浪や暴風を防ぐための防波堤などの施設が整っている。
避難港の例としては、北海道の奥尻港、青森県の尻屋岬港、千葉県の興津港、静岡県の下田港、沖縄県の安護の浦港などがある。
参考:港湾:全国避難港情報ポータルサイト – 国土交通省 (mlit.go.jp)
珊瑚礁海域の航法について
・すぐに減速できるようにS/B ENg.できるようにしておく。
・夜間や視界制限時の航行はできるだけ避ける。
・測量の精度が高くない水域や、最新でない水域があるため、常にエコーサウンダーを使用して水深に注意を払い航行する。
・強い潮流が突然発生することに留意する。
・海面の色によって、ある程度水深の浅い箇所を把握することは可能であるが、最重要は船位の把握と、コースラインからのズレである。船位を頻繁に計測できるよう、事前に顕著な物標を海図上で把握しておく。
・顕著な物標が少なく、クロスベアリングによる測位が難しい海域も多い。レーダーやGPSを活用して、頻繁な船位把握に努める。
30°Nにいる場合に300マイル東に走ったら緯度は何度になるか30°Eにいる場合に東に300マイル走ったら経度は何度になるか177°Eから同じく東に300マイル走ったら経度は何度になるか
60°Nにいる場合に300マイル走ったら緯度は何度になるか